大いに度肝を抜かされる話

〈連載「訳読‐2」解説〉グローバル・フィクション(その28)

率直に言って、今回の訳読は、これまでのうちで最も「信じがたい」とコメントしたい議論です。

ことに地下基地について、確かに冷戦時代、まだ若かった私は、核攻撃に備えた地下シェルターがアメリカ全土に建設され、個人の家庭向けにも小規模の地下豪が販売されたとのニュースを幾度も聞いたことがありました。そうした話を思い出せば、点としての重要地下シェルター施設が線としての地下トンネルで相互に結ばれていたというのはあり得る話ではあります。

そうではあるのですが、そうしたトンネルを掘るために、なんと原子力駆動のトンネル掘削機が存在し、岩石を溶かしてマグマ状にして掘り進み、それが冷えてガラス状の覆工となったという話は、技術的に本当に可能であったのかどうか、考えさせられてしまいます。

例えば、それほどの高温に長時間耐えてトンネルを掘り続ける金属や機械装置が作りえたのか。またそれにそれを操作するオペレーターは生命の危険なく搭乗しえていたのか。

本文にはその機械の写真も掲載されていますが、それは一見、今日の土木工事に用いられるトンネル・ボーリング・マシーンと同規模できわめてよく似た機械と見うけられます。しかし、その掘進速度は一日に8キロといいますから、信じられないほどの驚異的速さです。ちなみに、今日のトンネル・ボーリング・マシーンは、最速でも日に80メートル程度です。つまりこの秘密の機械は、その何と100倍です。(この写真は、よく見ると、マシーンの頭部の先の地山の部分が塗りつぶしたような感じがあり、全体に不自然な感じを受ける写真です。加えて、写真右上隅にある表示板の文字は、何やら漢字らしく――少なくとも英語ではない――にも見えます。)

ともあれ、それほどのものが、原子力駆動で働いていたといいます。むろん、軍事目的であったわけですから、採算とか安全は度外視されていた話――極秘扱いの惨い話もあるのかも――でしょうが。

ともあれ、今回の訳読は、そのように、おおいに度肝をぬかされるストーリーです。

ではその訳読にご案内いたします。

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