「イルミナチ」=資本主義のDNA

〈連載「訳読‐2」解説〉グローバル・フィクション(その64)

本章「秘密家族」を読んで深く気付かされることは、いわゆる「陰謀論」賛同者に広く知られた用語である「イルミナチ」を、ある歴史的に継続されている実体ある組織であるかのように考えて追跡すると、その努力はほぼ無に帰されることです(あるいは、「ナイーブな陰謀信奉者」とのレッテルを張られるのが落ちです)。それは確かにつかみどころのなくカモフラージュされた何かではあるのですが、例えば、何らかの法律の処罰対象としてやり玉にできるような、そうした実体とは考えないほうが賢明なようです。いわば、そうした既存システムによる捕捉が効かないからこそ、その存在の意味があるのです。そういう、《資本主義の本髄》あるいは《資本主義のDNA》こそが「イルミナチ」であって、それをしっかりと体現させている人物や団体があれば、それは立派に、「イルミナチ」と名乗っても良いということです。それこそ、「陰謀論」になぞらえて言えば、資本主義の真髄とは、陰謀の域あるいはDNAの深みに達しないで、どこが資本主義か、ということです。

ついでに、もう一歩つっこんで言えば、それを「資本主義」と規定することすら、その下手人を取り逃がす誤概念化であるでしょう。たとえば、グーグルを「イルミナチ」だと言っても誰も賛同しないように、それらはいずれも、資本主義を超えようとしている資本主義であるからこそ、「イルミナチ」なのです。

 

ところで、本章の読みどころの一つは、「連邦準備銀行のからくり」や「ネオ・イルミナチ」のセクションです。おそまつながら私も、アメリカの連邦準備銀行が私的機関であるとは、人生も晩くになってから知ったことでした。私ごとを引き合いにして申し訳ありませんが、かくのごとく、マネー制度は、実に巧みに装われたシステムで、しかももはや今日、だれ一人として、そのシステムから無縁ではいられなくなっています。

言うなれば、これらのセクションに述べられていることくらいは、中学や高校の教科書に書かれてしかるべきことだと思います。

 

では、「秘密家族(その1)」の章にご案内いたします。

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