ある種の“ウンザリ”感―――正直言って、このエソテリック三部作を訳読していて、それがあるのは否定しません。しかし同時に、著者ブラッド・オルセンがアメリカ人の一人として発する深い〈うめき〉の響きが、私には伝わってきます。そしてそれほどの泥沼の深さがいまのアメリカ社会なんだろうと認識されてきます。
ただ私は、翻訳にはまったくの素人――最近では翻訳アプリのおかげでその訳読スピードは上ってますが――で、英語原文のニュアンスなどには無頓着なままでやってきています。したがって、訳読文の字ずら上に、そのうめきの響きは表われてはいないはずです。ただ、その三部作に長年にわたって取り組んできて、私には、その全体に流れる印象として、そう感じられます。
2016年のトランプ登場以来の米国では、いわゆる「陰謀論」との言葉はメディアのキー用語になった感があります。そういう意味で、本三部作も、もっぱらその一種に扱われているようです。つまり、それほどまでの奥儀に掘り込んでいっているのがこのエソテリック論のエソテリックたるところなのですが、その発想がどうして起こってきているのだろうかと考える時、やがて発見するのがこの「うめき」の気配なのです。
翻訳の腕前上ではそんな程度の本訳読なのですが、時間を作っていただいて気長にこの三部作を読んでいただければ、その気配は感じられてくるはずです。
来年11月の大統領選も、バイデンとトランプとの二人のじいさんへの「不人気投票」の様相を帯びる中、そんな選挙メニューを出されても、食欲のわきようのないもない、ウンザリ加減ふんぷんというのが米社会なのでしょう。それをながめていて、私がもしアメリカ人であったなら、こんな著作に取り組む発想も納得できるところです。
では新たな訳読章「世界支配」にご案内いたします。