ドエライ変化か、またしてもの逆宣伝か

コロナが発する《マネーの君臨》への二面警告

以下は、“主流経済の辺縁者”の見解である。それによると、ひょっとすると人類は、目下、コロナ禍を契機として、その文明を牛耳ってきた《マネーの君臨》――手段と目的の逆転――の、新次元への変貌の瀬戸際にあることを目撃しているのかもしれない。

というのは、今や世界の各政府は、コロナ感染の深刻さゆえとして、何らかのロックダウンをせざるをえない、あるいは、そう操っている。一方、その結果の窒息させられた経済の蘇生――ことに失業対策――は手を抜けず、膨大な援助金を放出しており、その財源は結局、将来からの借金である。世界のその総額はこれまでにないレベルに達し、現行の経済体制を脅かせかねない事態となっている。

ことに、経済学の従来の常識では、そうした野放図な政府負債は、ハイパーインフレをもたらす恐れがゆえに禁じ手とされてきた。それが、やむなき必要に迫られて手を出してみれば、インフレどころかデフレさえ発生しており(これは日本の“生体実験”が世界に教えたようだ)、金利もゼロどころかマイナスにすらなって、どこの政府もその借金への警戒感が、事実上、消滅してしまっている。

これをチャンスとしてか、中国のみならずOECDでも、デジタル通貨を構想する動きが競って現実化し始めている。もはや「お金の印刷という無駄な作業は撤廃する」、まずはそんな宣言が予想される。しかし、いったい、そんなことで済むことなのだろうか。

推測すれば、もし通貨がデジタル化されれば、通貨発行はもはやシステムに入力する単なる数字問題となり、その制度の役割も、そのシステムのプラットフォーム上のポリシー問題とすら化す。完全かつ超迅速な統治者意志貫徹の可能性である。こういう事態は、為政者には、歴史的にもかってなかった実に魅力的な機会である。誰しも、全知を投入して、その検討を深めているに違いない。

そこで思うのだが、その行方は二極状であり、一方では中国が典型となる巨大な中央集権化が可能となり、他方では、ブロックチェーンのような技術を活用すれば、完璧な分権化が実現しうる。

そしてたとえば、通貨デジタル化をテコに、これまでの現金資産のコントロール――ことに没収あるいは凍結などの強権手段――の有力な手法となりうることだ。

もちろんこれは、お金持ちにとっては絶対に許せぬことだし、窮乏者にとっては、まさに革命的な世直しへの道を開く。

デジタル通貨議論の狙いは、舞台裏でこのように密かに画策されている、そんなところにあるのではないかとするのが、私の「ひょっとすると観」である。

こうしたまさしくドエライことが、コロナ危機という歴史的災厄の克服策をめぐって、人類が遭遇しているとどのつまりの意味であるとにらんでいる。

 

実は、こうした見方にひとつの示唆を与えてくれる契機があった。ちょうど、私が上記のような「ひょっとすると観」を考えていた時、私のブログの掲示板に、一つの奇異なメールが舞い込んできた。

それは、人から人へと送られるチェーンメールだったのだが、その元の発信者は、カナダ政府内の「戦略委員会」のメンバーである自由党の政治家と自称し、自分たちは委員会の少数派で多数派に押し切られるので、委員会が計画していることをあえてリークして世界に警告するとの趣旨のものであった。

それによると、その委員会は首相府が先導するもので、その「ロードマップ」によれば、もし感染拡大が収まらなかった場合、来年半ばまでに最大のロックダウンを実施し、軍隊の動員や、強制ワクチン、そして、それで発生する大量失業への対策に、各個人には「一律基本収入プログラムへの移行」が適用される。ことにこのプログラムの内容とその財源に関しては、こう述べている。

その仕組みは、カナダ連邦政府が、すべての個人債務(住宅ローン、ローン、クレジットカードなど)を帳消しとし、その財源は全額、IMFの世界債務リセットプログラムによって提供される。〔英語原文からの私の訳〕

この「世界債務リセットプログラム」が何たるものなのかの言及はないものの、偶然とは言え、なにやら、私の「ひょっとすると観」との妙な符合がある。

ともあれ、読みようによっては人騒がせを狙った眉唾モノだし、いよいよそうした“大変化”が構想され始めたのか、とも解釈される。

そこで、このカナダ政府の「戦略委員会」たるものを調べてみた。その結果は、そうした委員会は存在せず、このメール内容はフェイクと判明した。

ならば、それがフェイクなら、その目的は何かなのだが、いずれにしても、そのニセ情報に現実味を与えていることは、現在のゆるんだ政府債務規律の行く末に焦点を当てていることだ。

つまり、もはや禁じ手ではなくなった巨額の政府負債問題は、まさに誰にとっても「舵取りの誤れぬ」重大問題であって、このフェイクの下手人たち――超富裕者組織だろうがQアノンだろうが――も、それを目下の注目事と見なしているのだろう。

そのようにして、私の憶測を片方に、また、このリークメールを他方に、二極化した状況が垣間見えてくる。つまり、コロナがもたらしている富裕階級と庶民階級への互いに逆向きの二面の警告である。

いずれもいまだ深刻化の中腹ではあるが、そういう頂上的な意味合いが潜んでいるのは確かだ。

さあ、あなたなら、いずれ側の政策を支持するのだろうか。

どうやら、コロナ危機とは、そういうレベルにまで至ってきていると判断され、もしそうだとするなら、これはまさしく「ドエライ」ことで、それこそ、それが本当かどうか、私なぞは、それを見届けるまでは、おめおめ老いぼれてなぞいられない心境である。

【付け足し】 上記のメールは、私には西洋人の個人名のホットメールで送られてきた。しかもそれが、ジャンクメールとしてではなく、私のブログのフォーラムへ直接送られてきた。ということは、その送り手は、私のブログを知っている人ということとなる(ロボット送付排除スクリーンはかけていない)。その人が、あえて私にそれを送ってきているとすると、まずそれは、英文による国際的交信であり、さらに、もしそれが悪意なら私を図ろうとの国際的回し者の仕業であろうし、もし好意なら国際的連帯の過激メッセージと解釈される。

こうしたその両極の可能性を読んだ上で考えると、もはや「民主主義」の在り方は、国別に権威筋がピラミッド状に組み上がった20世紀型のそれとは質も形も異とする、国際的にフラットに広がった《真意のくみ取りを基礎にしながらネット状に共同しあう》――「連帯リテラシー」とでも呼ぼうか――、新たな次元の民主主義の芽生えであるようにうかがえる。

もしそういう「リテラシー」が実態となれば、いわゆる「陰謀論」とか「対抗言説」とかはどうでもいい呼称にすぎず、要するに、受け取り手が働かせる、顕微鏡でいうなら“分解性能”にかかっているということとなる

 

 

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