医学に臨床という分野があります。それは、医学という応用生物学の体系を、実際の病気や傷を負った患者に適用する実用分野のことです。言ってみれば病院《現場》での実務の分野です。
同様な臨床分野を科学全般について見るならば、それは「臨床」とは呼ばれず、「技術」と呼ばれます。医学の裏付けのない臨床がないように、科学の裏付けのない技術はありません。そして、そうした一体となった関係をもって、科学技術などとひとくくりに称されたりもします。そういう技術が私たちの生活《現場》向けに実用化されたものが、今日の市場をにぎわす様々な商品群です。
芸術についても、上の二領域ほど明瞭に区別されるものではないにせよ、音楽、美学、文学と呼ばれるものが教育カリキュラムに採用されているように、その学問的・理論的分野は存在し、その「臨床」分野といえば、コンサートとか美術館とか書店とかがあります。そして、印刷とかオーディオ技術を駆使してさまざまな商品に生まれ変わって、私たちの毎日の生活《現場》を彩ってくれています。
それぞれ以上のように見なせるのであるならば、私たちの人生というそれらすべてを含んだ《現場》にも、それを「臨床」と見る視点はありえるはずであり、さらに、それが「臨床」と見なせるのなら、そういう実用をもたらす元となる、たとえば《人生学》と呼んでもよいような学問体系があってもしかりなはずです。 詳細記事