地球人とETとのハーフ

〈連載「訳読‐2」解説〉グローバル・フィクション(その34)

おそらくこの章は、本書の中でも、もっともSF(サイエンス・フィクション)の度合いの高い章ではないでしょうか。言い方を変えれば、極めて深遠な仮説――あるいは最奥に隠されている真実や宗教分野にもおよぶ視野――を掲げている章ではないかと思います。

ことに、すでに人類の一定部分は、遠い昔のETとの混血による、人間とETとの「ハーフ」である(そういう言葉は用いていませんが)と言っている箇所は、その典型だろうと思われます。

これは注意深く読み込まないと判りにくいのですが、本章全体から私の解釈するところでは、白人のヨーロッパ人は、結局、本書で「ノルディックET」と呼ばれているETとのハイブリッドの子孫であると言っている議論です。

私はこれを読んで、ある納得するものがあります。というのは、昔、アフリカの黒人が人類の起源であると知った頃のことです。それが事実なら、どうして白人がいるのか――特に日本人は彼らに異様な「コンプレックス」を抱かされている――との疑問がありました。それはたぶん中学生の頃かと思います。その後、そうした疑問に、白人は、黒人の中のアルビノがアフリカから北に移動して、ヨーロッパ大陸に住み着いたもの、との説明を見つけたことがありました。

当時は、それはそれで受け入れていましたが、どこか納得できないところもありました。なんというのでしょう、アルビノという異常個体説で白人種全体――ことにその言われる「優越性」――を説明するには、規模も質も違いすぎるような気がしたからでした。

そういう長年の疑問に対する今回この遠大な仮説なのですが、それは、近代の地球をリードしてきた白人種の働きの理由を説明する――白人優位説の根拠――には、それなりの要所にふれているなと、思い当たっているところです。

例えば、私には、北欧(ノルディック)各国は、白人諸国の中でも、とくに賢い国だなと思うところがあります。そこでなのですが、最近、私の働く店に、フィンランド――世界で最高水準の教育制度を持つといわれている――の「女の子」がワーホリで働いていたことがありました。二人いたのですが、そのどちらもが、同じような印象をもっているのです。若いのに落ち着いていて、かといって高慢というのでもなく、静かな親しみやすさがあって、ともあれ、ちょっと違うのです。やや陰気なところ、特に口調が、ないのでもないのですが、白夜の国で育てばそうなるのかな、などとも思っていました。そういう印象が、もし「ノルディックET」の影響、あるいはその“子孫”なのかとするなら、それでなのか、と合点がゆくところがあるのです。

そういう、地球の白人種にまつわる、一連の認識があるわけです。

この章は、そのように私に再度思いつかせるものがある、ETたちの植え付けたものを、「星の種」と呼んで、章の結論部を成しています。

そこでですが、そうした「種」が、西洋世界にだけまかれたのかと言えば、そういう偏りは、はるばる宇宙をわたってきたETにしては、ちょっと不自然な気もします。

逆に、本エソテリック2部作を「東西融合〈涅槃〉思想」と共通して訳しているように、もしそういう種まきがあったとすれば、それは東洋世界では、仏教を中心とした〈涅槃〉思想に根をおろしており、そこにある壮大な宇宙観は、そうしたET仕込みの世界の気配を感じます。

それにしても、地球に国際連合があるように、宇宙に惑星連盟があり、各星の人種たちの、協力や反目があるというのは、なんとも地球“現世”めきすぎる気がします。それとも、それが生命の汎宇宙的現実でもあるのでしょうか。

 

ところで、話題は「下ネタ」気味となりますが、以前、「《老いへの一歩》シリーズ」の最終回で、人間(動物一般も含め)の性器と排泄口がどうして隣り合わせに近接しているのか、その生物学的説明はないものかとの疑問を書いたことがあります。

その中での私の推測も書きましたが、本章の「遺伝科学の師」の節で述べられている、「生殖の引き金」というETたちが求める地球の動物のもつ働きは、上の疑問に答える、生物の生態系メカニズムからの説明がなされています。

つまり、自然の生態系を動かす最重要なメカニズムは、壮大、複雑な《循環》というバランスです。つまり、自然をなす生き物たちは、互いに食べ、食べられる循環を繰り返し、その平衡と全体性を保ってきています。そういう生命の全体の循環が、一個の動物身体上では――むろん人間も同じく――、一方で「他の生命から命をもらった食物の排出口」と、他方で「自分の生命が命を生み出す口」とが、共通する働きとして、おそらく同じ衝動の作用箇所として、近接して配置されているのでしょう。

そうした、なんとも“いとおしい”行為や身体構造が、高度に進化し切ってしまったETには「退化してしまって、もはや存在していない」と本章は述べています。そして、そうした進化の結末の行き詰まり――それらがない世界とは、なんとも味気がなさすぎます――を解決する方策として、ETたちはUFOを使って過去へとやってきて、人間のDNAとか動物の生殖器を採取しているというのです(あわせて、人間のポルノなども、 “使用法テキスト”として収集しているのかもしれません)。

なんともすごい《循環の必要》という話でないでしょうか。

 

それでは、「宇宙生命体」の章にご案内いたします。

 

 

 

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