聖なるシンボル(その1)

〈訳読‐2b〉現代の「東西融合〈涅槃〉思想」(その35)

 

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聖なるシンボル(その1)

「地球上のすべての現象は象徴的であり、各シンボルは開かれた門で、魂の準備が整っていれば、世界の内部へと入ることができる。そこは、あなたも私も、昼も夜も、すべてが一体である。」 ――ヘルマン・ヘッセ(ドイツ人作家)

聖なるシンボルは、宇宙の言語である。それには、実際に我々が誰であり、人類や細胞分裂や多くのイメージの根底にある幾何学が何であるのか、その謎を解く力がある。その隠された意味は、各時代を通して、画像、神話、民間伝承、そしてシンボルを使用した神秘主義者によって明らかにされてきた。幾何学の母型と印は、完璧に完全で、不変で、時間を越えた現実性をもって、「神の心」から直接に表出してきている。宇宙は振動であり、これらの聖なるシンボルの原則はすべて、振動である波形現象に直接対応している。科学は宇宙が振動であることに同意している。聖なる幾何学とシンボルは、視覚、時間、宇宙次元での振動として見ることができる。

シンボルは、込み入った課題を表現する力をもつ画像である。孔子は、「印やシンボルは世界を治める。言葉でも、法律でもない」と述べた。しかし、同じシンボルでも、文化や時代が異なれば、異なる解釈を持ちうる。かぎ十字〔卐〕は、ドイツのナチスでは絶対悪に結び付けられた。しかし、極東では、歴史的に、まんじ〔卍〕は太陽の年軌道の象徴である。それは幸運のシンボルとみなされ、今日でもインドでは再生を表す。またギザのスフィンクスは、エソテリック思考のもうひとつの秘められたシンボルで、エジプトの砂漠時代以前――アフリカ北部の土地が緑豊かなオアシスだった頃――から生き残ってきたアイコンである。その究極のエソテリックな質問は、スフィンクスの謎かけで、4本の足から始まり、2本の足に変わり、3本の足で終わるのは何かを問うものである。その答えは人間で、赤ちゃんの時4本の手足ではい、大人になって2本の足で歩き、老人となって杖をついて歩く

シンボルはまた、聖なる幾何学のように、無意識的な表現力を持ち、美しさとして認識される。おそらく、私たちが神聖な建築を視ているときに畏敬の念を感じる理由は、生体建築を鏡として神と遭遇することができるからである。ゴシック様式建築は、天体の比率をとらえ、それを地上の領域にすえたように見える例である。これは、建築物が、神聖な均整の重要さが私たち自身の生体構造に反映されているからである。例えば、肘が曲がって腕が2つの部分となる箇所は、数学的には21対34、または1:1.618の黄金比を成す位置で、時計回りに21の螺旋を、反時計回りに34を持つひまわり花のような花の数学と同じである。そのような場所では、なぜ高揚感を感じているのか分からなかったり、無意識であったとしても、私たちは、頂上体験をすることができる。

 

 

エジプトの聖地アビドスにあるオシレイオン神殿の「生命の花」は、柱の原子構造に焼き付けられ、多くの人が試したように岩が欠けてもイメージが見えるようになっています。現在、この技術を再現する技術はない。地下室は、古代エジプトの遺跡の中でも最も古代のものである。(with per-mission, (c) Brad Olsen, 2018)

 

 

 

シンボルをとらえる

伝統的シンボルはアイデアやコンセプトや言語の視覚的縮図を形成するが、その働きと意義はそれの基本的説明をはるかに超越したものである。何千年もの間、シンボルは、その直接的で強いイメージを通して、人間の生命に関する信念を具現化し強化することを芸術家や職人たちに可能としてきた。建築家は聖なる幾何学の原則を把握し、それをデザインに取り入れた。神秘主義者でさえも、それらの永遠の姿を表現するため、視覚的なシンボルを考案した。そうした手法を通じて、シンボルは世界を支配する。言葉でも法律でもない。

「新世界秩序」を構想するにあたって、もし秘密エリート集団が古くから有力であった一連のシンボルや教えを継承しているのだとしたらどうなのだろう。それは本来は肯定的であったのだが、それが継承されて以来、恐ろしいほどに否定的なものに歪曲されてしまっているのかも知れない。おそらく、そうしたエリートは私たちの現実に関する真の秘密を握っているのだろう。彼らの象徴主義や数秘学〔numerology〕は、こうした秘密を解読するために用いられている可能性がある。イルミナチは自らの使命をある程度は公表している。彼らは象徴主義が彼らに支配力を与えると考えている。これが、建物、映画、漫画、ビデオゲームがフリーメーソンのシンボルで満たされている理由である。しかし、真実は、シンボル自体の中にはそうした力はなく、むしろそれは、私たちの意識的、無意識的、そして超意識的な心理からの派生物であり、特定の記号を他の記号よりも強力に見てしまうためである。世論を支配し、価値あるものとみなされることに影響を与えようとする人々は、これと同じ理由から、公的な姿を隠そうとする。彼らはまた、人々の間の議論――何が存在し何が存在しないのか、ことに姿を見せない人が実際には存在していないのかも知れないとの議論――を承知しているがゆえにまたそうする。例えば、隠されていた方が効果的とされる場合、それが秘密結社〔創設〕のヒントとなっていると考えることは理にかなっている。それはまさに彼らがあなたに考えさせたいことであり、だからこそ、あなたは彼らの存在がないものとさえできるのである。彼らはおそろしく賢いのである。

イルミナチが最も頻繁に使用するシンボルは、一つ目のピラミッドで、多くの異なる場で使われている。最も一般的なのは、1ドル紙幣の裏面のそれで、頂点に「プロビデンスの目」を持つピラミッドが描かれている。これは、数秘学と象徴主義の実例で、見る者にいかに深い意味がひそんでいるかの漠然としたイメージを与えるためのものである。私たちは誰も、数字の666を悪魔や巨悪を意味するものと聞いたことがある。しかしそれは単なる数字にすぎないのか、それとも何か別のものなのか。この数は多くの異なる数で割り切れる。ロバート・ミルズというフリーメーソンがデザインしたワシントン記念塔は、全長が666フィート、地上高さ555フィート、地下の深さ111フィートで、別の見方をすれば、そのオベリスク自体の高さの555.5フィートは6,666インチに等しい。これは偶然の一致なのか。地面上の寸法では、記念塔の各底辺幅が55.5フィート、すなわち666インチであることも考慮されたい。私たちがフリーメーソンの象徴主義を理解するためには、まずシンボルの一般的な意味を理解することが重要である。

 

 

 

 

神智学会の紋章は、よく知られている多くの神聖なシンボルだけでなく、自分の尾に食いつくウロボロスの蛇――上部と下部の両世界を結ぶ象徴――も表されている。(with permission, (c) Brad Olsen, 2018)

 

 

 

シンボリックな意味

スイスの精神科医で影響力ある思考家のカール・ヤングは、シンボルは個人や文化の境界を越えて同じ意味を持ち、言語も例外ではないと考えた。彼は、そうしたシンボルの総体を、「集団的無意識」と呼んだ。彼は、シンボル、集団的無意識、そして私たちの暮らしの中の同期性の概念に執着した。彼は言う。同期性は、偶然に同時に発生しえない2つ以上の出来事の経験で、それらが意味ある形態で同時に発生することが観察される。一般人の言葉では、同期性は「意味のある偶然」とみなされる。ユングは、心理分析を拡張することで、人間の心理に象徴主義の概念を探究し、人間の心理における、宗教、神話、錬金術、占星術、社会学、文学、芸術そして夢の中でのシンボルの役割を分析した。占星学の基礎と、神話的概念の発見との輝かしい統合を広範に研究し、ヤングは、占星学が深く、神秘的で精神的な基盤を持っているという結論に至った。フリーメーソンたちは、他の人たちよりもことに、占星学にことさらに注目していたようである。そうした普遍的な概念とシンボルは、上で触れたように、しばしば母型と呼ばれ、認識可能な模範形または他のすべての概念がパターン化された根元のモデルである。フリーメーソンたちは、明らかに、その図形的イメージの実用性をつかんでいた。

シンボルはまた、非常に暗い面を持っている。それは特定の信念と恐怖を――時にはサブリミナリー(識閾下)で――大衆に注入するための効果的なツールとして利用されうる。悪魔の聖書上のイメージ――善悪の知識の木に巻き付いた蛇――は、そのような強力なシンボルのひとつである。世界は極めて組織的で無慈悲な崇拝――世界に巨大な勢力を保持している――によって運営されていると信じている人にとって、恐怖に基づくシンボルは笑い事ではない。強力な個人――確かにキリスト教ではないが秘密の宗教を実践している――によって使用される道具がある。そうした世界的な崇拝には、独特の信念体系がある。それは翼を持つドラコ爬虫類人種との地球外生命体であるルシファーに基づく。それは、あらゆる吸血鬼の物語、映画、そして吸血モンスターや典型的ガーゴイルなどに形を変えるイメージを説明している。古代の神秘学宗派の教えに憑依されたそうした血に飢えた集団――無実の人々を犠牲にして自身の目的を達成しようとする――を考えるだけでも恐ろしいことである。そうした者たちにとって、ルシファーは「光を灯す者」とみなされ誤解されている。彼らは、ルシファーと悪魔を明確に区別し、儀式的な手段で召喚することができるのがルシファーで、悪魔とはただ神話上の話と信じている。

私たちが覚醒し、自分が恐怖によって低振動の状態に保たれ――たとえ象徴に無認識であったとしても――支配され操作されていたことを認識すると、私たちはすぐにそのバランスを変え始める。私たちが私たちの生活や私たちの周りの世界にもっと多くの愛、平和、調和、思いやりを注ぎ始めると、量子力学は宇宙全体の幾何学的形態を再構築しており、私たちが一体化することを可能にする。そして、シンボルを再解釈して再利用し、私たちの目覚めたビジョンは、それらを人間にとって強力なポジティブなイメージの正当な役割に変える。 以下は、歴史を通じて使用されてきた、最も有力なシンボルのいくつかである。

 

ホールスの目

ホールスの目」――「ラーの目」とも呼ばれる――は、通常、女神ウアジェトに擬人化されて発見されている。それは、古代エジプトの保護のためのシンボルで、王の力を象徴した。伝説では、ウアジェトは宇宙の最初の神アトゥムの娘だった。彼は自分の「目」――知恵を意味する第三の目――から彼女を創った。ウアジェトという名前は、「緑色」という意味の「ウアジェ」に由来し、「緑色のもの」を意味し、ギリシャ人やローマ人には、保護のために立ち上がるコブラをイメージして、「上昇するもの」として知られていた。コブラは多くの王の頭の飾りに見られ、太陽の火のような目を表している。

ホールスの目は松果腺を象徴して表し、しばしば松の実を暗示している。ホールスは、空や地球、地下世界など、創造された世界のすべてを支配すると信じられていた。「ラーの目」は、太陽神ラーの光を表している。これは永遠の命である。光は、人間にとっての可視波長の電磁放射である。光の神である太陽神ラーは、松の実と、ひいては松果腺または第3の目と関連している。

エジプトの伝承によれば、女神イシスはオジリスの死後、〔処女で〕息子ホールスを生み落とした。ニューヨーク港の「自由の女神」像は、何人かの学者によって、このエジプトの女神イシスの別の姿であると考えられている。また同像は今日まで存在する隠れた神秘派宗教におけるルシファーの女性的側面とみなされている。この主張は、「自由の女神」の先から放射される光線――「神秘の火」を象徴する「古代の聖火」であるたいまつ――がそれを物語っているとする。また、彼女が持っている本は地下組織――地上にシンボルを浸透させようとするオカルト組織――の隠された教えを象徴している。

「全てを見る目」はエジプトの神秘宗派を起源――モーゼと同時期に、神が人々を裁きイスラエル人をエジプトの地からエジプトの地に導いた時――としている。この目は、太陽神であるホールスの全能の力を表した。カトリック教会で見られるように、太陽光を放射するホールスの目がここに見られる。(with permission, (c) Brad Olsen, 2018)

 

アンク

楕円形の頂部を持つ特徴的な十字記号「アンク」〔下図〕は、5,000年以上昔、アフリカの文化と文明の中で生まれた。多くの点で、アンクは宗教を越えたシンボルで、宇宙とともにすべての人々を表している。上部のループは、永遠の命とも言われる女性の子宮を象徴し、他方、下部の細長い部分は、陰茎という男性的側面を象徴している。これらの2つの神聖な組み合わせは、アンクで合体し生命を形成する。それは長い間、生命を与え再生する人の力の象徴であった。その力強い表示力のために、アンクは王族を含む文化的儀式で使用された。それは、水や空気や太陽といった根本諸要素に関連するだけでなく、たびたびアンクを身に付け姿で描かれているエジプトの神々とも結びつけられている。

アンク あるいは 輪頭十字

アンクは、人類に知られている最古の形而上的なシンボルである。これは、広く受け容れられた理解によれば、古代ケメット――ギリシャ人によってエジプトと改名された――の言語で「生命」を意味する。古代エジプト人にとって、アンクのシンボルは神の生命と神の創造を表している。アンク――生命の鍵やナイルの鍵や輪頭十字を描いたものとしても知られている――は、エジプトの象形文字で、「永遠の命」と読んだ。エジプトの神々を描いた肖像画は、よくアンクの飾りを持っていたり、胸の前で組んだ腕の手に携えていたりしている。アンクはまた、頻繁にエジプトの墳墓画や他の芸術に見られ、時には神や女神の画像――エジプト人のミイラに生命を与えている後世の神々を表している――の指先に見られ、受胎行動を象徴していると考えられている。古代エジプト人にとっては、それはまた、対立の統一、生命の創造、そして宇宙における男性的および女性的な力の統一を象徴している。それは男性と女性の一体化と、中国の陰陽のシンボルのような宇宙の正と負の力を表す、後世の子孫の想像上の象徴でもある。古代エジプトのイシスの暗示はその原型であり、原初の神秘的印であった。加えて、アンクはよく、エジプト人によってお守りとして、単独に、あるいは、「強さ」や「健康」を意味する他の象形文字と組み合わせて携帯されている。また、平らに打たれた金属の鏡は、しばしばアンクの形をしている。

エジプトのアンクとキリスト教の十字架は、ともに、私たちの存在の縦と横の軸を象徴している。横軸は、私たちの周りの現実世界で、そこに、私たちを上へと引き上げる縦軸があり、そうした上昇は、私たちを客観的愛へと結びつける。主観的愛は条件をもつ。だが客観的な愛は無条件である。私たちは自分自身のために恋愛を始めるが、愛は他者へと放射できる。結局、愛は質問に関係なく解答である。自分自身に奉仕する前に他者に奉仕することに専念し、目的が愛であるときには、両者はひとつであり同じものである。

 

キリスト教の十字架

キリスト教の十字架は、イエス・キリストの磔刑の装具を表したものとして、キリスト教の最も知られた宗教的象徴である。十字の形――二本の線が直角に交わる最も単純な形――は、非常に古く、東洋でも西洋でも、キリスト教に導入される以前からのものである。それは極めて古代の人間文明にまで遡る。カトリック教会は今でも毎年「十字架挙栄祭」と呼ばれるものを祝う。

むろん十字架には他にも秘密の用い方があり、その延長上に、エソテリックな実践がある。古代の錬金術の行為――鉛を金に変えようと長い間崇拝されてきた技法――は、今日はしばしば科学の初歩と考えられている。しかしそれは、何世紀にもわたって人的変容のための隠喩でもあった。不純物を除去して、なにか偉大なもの、より特別なもの、より強力なものにするプロセスは、主にキリスト教徒のメーソンが願望したことであった。フリーメーソンへの入会は、儀式、すなわち、熱烈で驚異的になるという意味を通じて行われる。最初に、被験者の視界は、頭の上にかぶされる「目隠し」で除去される。そして、メーソンの尊師――冷酷な死神の姿をしている――は、警告を発する。「もしお前が辛抱できれば、おまえは清められる。もし暗さを克服できれば、お前は啓発される。しかし、もしお前が恐れることがあれば、前進はない」。この儀式の当惑させられる部分――ほとんど言及されてはいない――は、死の処罰に関するメイソンの秘密を決して明かさないという入会の誓いである。それには、「フリーメーソンの秘密を明かした際の処罰は、栄光の死となるべし」と述べられている。そしてその先に進むことを選ぶ者は、メーソンが「熟想の部屋」と呼ぶ場所に導かれ、目隠しが取り除かれる。この段階で、入会者には非常に興味深いイメージが提示される。あなたはその部屋にはキリスト教の十字架が目立つと思うだろうが、そこには人間の頭蓋骨や骨、錬金術の諸器具、ペンや紙が納められている。そこで入会者は最後の遺言と誓いを書く。そうした諸シンボルは、入会者に自分の人生が永遠に続くことはないという事実について考えさせ、通常、途轍もない影響を及ぼすこととなる。この種の不気味な象徴主義は、フリーメーソンが一種の暗黒魔術を実行させてきたと、幾世紀にわたり陰謀論者たちをして考えさせてきた。しかし、フリーメーソンの儀式は、他の慣習とはあまり異質ではない。たとえば、カトリック教会のベールの中を見れば、あなたはその覆いのむこうに、拷問の道具である十字架の下に人々がひざまずき、血と肉を儀式的に飲み込む姿を見るだろう。「そら恐ろしい組織だ」と言う人もいるかも知れない。ここでの大きな違いは、メイソンと他の秘密結社がその秘密の儀式を覆い隠し、カトリック教会が公然とそうした行為を行うことである。

 

ソロモンの印形

ソロモンの印形

錬金術では、火と水の記号の組み合わせ――上下逆向きの二つの三角形――は、ソロモンの印形として知られている。このシンボルは、対立と変性の組み合わせを表している。錬金術記号の火つまり上向きの三角形、そして、水つまり下向きの三角形を組み合わせることによって、地球と大気の錬金術記号も生み出される。下向きの三角形は、中心に沿って、反対側の三角形の基線によって分割される。これは地球の錬金術のシンボルである。逆に、上向きの三角形を下向きの三角形の基線で分割されたものが大気の錬金術記号である。ソロモンの印形は完全なバランスで統一されたすべてを表す。それはまた、メルカバ〔神の戦車〕として知られている霊性の乗り物のシンボルである。

神話上のソロモンの神殿は今日のエルサレムにあり、極めて神聖な「契約の箱」を収容しているとされている。かつてそれが存在した具体的証拠はないものの、ソロモンの神殿は一神教神を崇拝すをるための古代ユダヤ教の宗教的焦点となってきた。 二つの神殿が同じ場所に建てられ、その後に破壊された。ソロモンの神殿はまた、「第一の神殿」とも呼ばれ、古代イスラエル人指導者ソロモンにより、エルサレムのモリア山と呼ばれる場所に建設された。モリア山は、メッカに向いて祈るイスラム教徒と同様に、ユダヤ教にとっての最も神聖な地であり、ユダヤ人が祈りの時に向く場である。その神聖な存在のために、ほとんどのユダヤ人はその山の上を歩くことはなく、ラビの法律によれば、その地には「神の存在」のいくつかの要素が残っているため、その「至聖所(Holy of Holies)」が立つところには、意味なく立ち入るようなことはしてはならない。聖職者階級が神と直接交信するのは、その「至聖所」からである。ユダヤ教の「第二の神殿」から出現した際のキリスト教は、ネオ・プラトン教、ミトラ教、グノーシス主義、マニ教、ディオニソス教など、「異教の一神教」をとなえる他の宗教と競い合っていた。将来、ユダヤ人によってその神殿の山に第三の神殿が建てられると預言されていたが、しかしユダヤ人にとってのジレンマは、「岩のドーム」と呼ばれるムスリム神殿がすでにモリア山に立っていたことであった。

 

フリーメーソンのシンボル

最初のメーソンは、文字通り石工や技能者であると言われた。彼らは、ヨーロッパの立派な大聖堂を建て、その技術の秘密を守ろうとした人たちだった。フリーメーソンは、聖なる幾何学の知識と深い象徴的な意味を長い間伝えてきた。フリーメーソンの中心的シンボルは、数学と聖なる幾何学に使用されるコンパスである。コンパスは、地球の磁極に対する相対的な方向を決定するための航海装置である。これは通常、北を指すよう磁化された指針で構成され、地球の磁場に自在に向き合うことができる。コンパスの導入以前は、海洋での位置、目的地そして方向は、主に天体の位置の観測の助けをかり、地上の目標物を目視して決定された。石工職人たちはフリーメーソンに関連する別のシステム、いわゆる「三段階制度」を始めた。その三段階とは、見習い、職人仲間、そして石工親方であった。これらの称号は、石工の必須道具である直角定規とコンパスのシンボルと合わせて、幾何学〔geometory〕や神〔God〕を意味する「G」の文字とともに、今日でもフリーメーソンで使用されている。それぞれの会合では、メーソンは、入念に飾られた羊皮のエプロン――石工の作業の必需用具の象徴――を着用する。フリーメーソンには、世界で思い描かれているイメージを越える、より深く、より古い、より神秘的な側面が多くあると言う人もいる。

 

フリーメーソンは、石工職人の道具を隠喩とし、ソロモン王の宮殿建設の略図を用いて、メーソン自身と批判家の双方により「寓話に隠され、シンボルで表現された道義システム」と表されてきたことを伝えている。右側図のコンパス上部の全てを見る目、そして、左側図の左右の二本の柱は北と南の両極を描写していることに注目されたい。(with permission, (c) Brad Olsen, 2018)

フリーメーソンは、いかにも古代的なアイデアの器であり経路である。実際、メーソンの中には、この集団は聖書時代の聖地を起源とし、ソロモン王の神殿を建てた者たちであったと言う者がいる。フリーメーソンの多くのシンボルは、さらに、それよりも古い。その六芒星は、多くのメーソンの建てた神殿の内部や外部に装飾として施されている。その六芒星――世界で最も古いシンボルのひとつ――は、おそらくソロモン王の神殿の内部で最初に発見され、それにもとづき、フリーメーソンは自らの哲学と学習を発想したのであろう。全てを見る目、ピラミッド、オベリスクは、キリスト教以前のすべての宗教の象徴に非常に深くかかわるイメージである。というのは、それは現代のどのキリスト教よりも古い真理の精神探求の手掛かりの一部であったと信じられていたからである。33という数字は、古代の神秘主義とフリーメーソンにとって非常に重要な数字である。イエス・キリストは、死の時に33歳であったというのも、その理由のひとつである。また、私たちの背骨には33の椎骨があり、フリーメーソンの多くは身体のコンセプトをもって聖堂にしなければならないというのもその理由である。 33は、メーソンが建てた寺院に繰り返されている。たとえば、それぞれ33フィートの高さの33の柱があるというようにである。ワシントン記念塔の頂石の重さは正確に3,300ポンドであるということは偶然ではない。その頂石はその神秘的な数字に一致している。

フリーメーソンの主要統括機関であるイングランドの連合総支部は、世界で最も古い総支部で、その創設は1717年に遡る。アイルランドの総支部<と共に、これら三つは、 「ホーム総支部」または「ホーム政体」と呼ばれている。しかし、多くの歴史家は、メーソンがテンプル騎士団にルーツを持っていると考えており、また他の者は、ミトラ教――飲酒、踊り、そして性的乱交といった退廃的な祝祭で名高い――として知られるローマ時代の極めて秘密宗派の残滓が主な母体となっていると言う。言い換えれば、フリーメーソンは改造されたミトラ教としてスコットランドに発生し、それは禁制のテンプル騎士団の流入によって勢力を増やした。鳥を主とする動物のいけにえは、紀元前の何世紀にもわたって地下のミトラ教寺院や他の異教徒の秘密宗派で行われていた。「タオルクトーニー」と呼ばれる雄牛殺しの儀式は、ミトラ教の秘密に重要な役割を果した。勇ましいメンバーが動物の犠牲に慣れ親しめば、彼らは人間の犠牲へと「卒業」し、そこに「霊性的意義」を見たであろう。秘密の宗教は、そうした定義上、秘密を貫いている。

フリーメーソンがシンボルを、式典や昇格儀式で使用して、入会者やメンバーにメーソンの伝統と意義について教育するように、彼らはまたシンボルを支部役員を特定するために用いる。13人の役員がそれぞれの地方支部の事業を監督する。その首席はマスターであり、それに続いて、シニアおよびジュニア・ワーデン、セクレタリー、トレジャラー、シニアおよびジュニア・デーコン、シニアおよびジュニア・スチュワード、マーシャル、インナー・ガード、タイラー、チャプランとなる。また、多くのレベルのシンボルがフリーメーソンが活動する場所に見られる。 たとえば、フリーメーソンの象徴主義はワシントンD.C.の大規模な記念塔や建物に蔓延している。しかし、これは一般から隠されているだけでなく、多くの歴史書はメイソンが共和国の初期に持っていた強力な影響について言及していない。

フリーメーソンにとって、知識は力である。ならばなぜ、すべてが秘密なのだろうか。それは、フリーメーソンが、聖なる幾何学の知識を使って地球上での神を演じているからのようである。フリーメーソンはメンバーが至高の存在を信じていることを仮定していたが、その限りでのことだった。メーソンは、ヤハウェ、イエス、アラーなど、自分が選んだ神を礼拝することができた。そういう宗教の自由がフリーメーソンに盛り込まれていた。そして多くの学者は、フリーメーソンがこのコンセプトを米国憲法に盛り込んだと言う。その建国署名者の3分の1はフリーメーソンであったことが知られている。だが、ほとんどの国民はこれを知らず、またアメリカがキリスト教国として設立されたのではないことも知らない。それは後にキリスト教徒の国となったが、建国の父の多くが自然神教〔deism(世界は神の創造したものであるが、神の支配を離れて自然の理法によって動くという思想)〕の信奉者であったことを認識しておくことが重要である。自然神教の背後にある概念は、人は有力であるとみなし、私たち一人ひとりが自分の人生に責任をもち、そしてそれは、フリーメーソンの根底にある信念である。自然神教者は、至高のものが宇宙を創造したと信じているが、その存在は非人格的なものである。それはあなたの祈りに答えることも、聞くことさえもしない。したがって、メーソンは自分の行動に独立して責任を負う必要がある。建国の父やメーソンは、道義や価値観に重点を置いていた。しかし、独立後数十年の間にメーソンの力が増したため、道義は後退し、権力と腐敗が前面に出るようになった。

メイソンの秘密主義は、恐怖のメンタリティ――低振動として知られる――に基づく彼らの友愛を、外部と遮断して守っている。恐れ、憎しみ、怒り、そして疑りは、人を地球上の3次元の現実に閉じ込めることができる。知識を控え、私たちが本当に誰であるかを理解できないようにすることは、次のレベルの意識に進化し、昇ることを阻止する戦略である。総権力は総制御に等しい。秘密集団つまり主支配者は、長い間、フリーメーソンにそのルーツを置いてきた。その友愛の秩序は、秘密のベールを有効にさせ、最高位メンバーを他のさらに秘密の集団に秘密裏に加担することを可能にした。

メーソンは、多くの場合、テンプル騎士団、ロシコルシア人、バイエルン・イルミナチなど、古代からの遺産を説く他の秘密結社と結びついている。最も勇敢な戦士であると評されたテンプル騎士団は、12世紀初頭のカトリック教会によって正式に支持された。彼らが世界で最初の銀行家たちのなかで非常に豊かで強力になったとき、彼らは脅威となった。14世紀初頭までに、教会と王室はその勢力をつぶすのにほぼ成功を収めた。一部の人は13日の金曜日の迷信は、1307年10月13日金曜日にフランス王が発行した秘密の令状――その勢力を逮捕する――から来ていると信じている。そのほんの2世紀前には、バチカンはメイソンを悪魔と非難していた。

 

【つづく】

 

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Modern Esoteric: Beyond Our Senses, by Brad Olsen

http://cccpublishing.com/ModernEsoteric  www.bradolsen.com

with permission, (c) Brad Olsen, 2015

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