“宇宙植民地”たる地球

〈連載「訳読‐2」解説〉 グローバル・フィクション(その78)

去る6月18日、トランプ大統領が国防省に対し米国宇宙軍の創設を指示した、との報道がありました。報道の限りでは、この「宇宙軍」とは、もはや武器開発の場が地球を囲む宇宙空間におよんでおり、そこでの制空権ならぬ、“制宙権”の確保を意図した構想であるかに伝えられています。つまり、戦争の相手はまだ地球人同士で、ただその場が、近宇宙に拡大されてきているとの想定です。

だがその一方、今回の「ユートピア前夜」の章――ことに「監獄惑星からの脱出」――に含められている、地球は地球外生命(ET)の植民地との議論は、すでに地球は、ETによって、それが分からぬほどにも巧みに占拠、支配されているとの設定に立つものです。つまり、SF映画「スターウォーズ」のごとき対異星人戦争もありかねぬ現実の世界です。しかしこうした議論は、おおかたの向きには、荒唐無稽過ぎる話として唾棄される分野であるでしょう。

しかし、少なくとも本書や、その姉妹書では、そうした宇宙植民地化の事態は想定下の話です。つまり、この地球を、時間軸にそって遡る「歴史的エソテリック」でも、あるいは、次元を拡大して異次元にまでもおよんでゆくという「空間的エソテリック」でも、二方向にむかって深追いして行く議論の上では、当然に含めてしかるべき分野ということとなります。

こうした二面のエソテリック論議によれば、そもそも人類の進化そのものが、その宇宙植民地としての地球のシナリオにもとづくものとなります。

あるいは、この「宇宙植民地」という言葉自体からして地球用語に過ぎなく、そもそも地球という一惑星そのものが、宇宙の摂理の産物であるという考えに立てば、「植民地」どころか、宇宙ファミリーの一人の子ということにもなります。

ともあれ、宇宙を、いい者も悪い者もいる《膨大な共同体》と見る観点からすれば、その共同体の首脳にとって、地球人同士の相克とは、児戯にすら値しない、微生物的共喰い行為であるのでしょう。

 

本書の訳読も、いよいよ大詰めに近づいてきていますが、偶然とはいえ、ここに至ってのアメリカの宇宙軍創設指示という動きは、なにやら報道通りには受け取り難い、秘された企てが潜むかの裏読みをしたくなる事態でもあります。

そうした真偽のほどをのぞいてみたい向きには、ぜひ、この「ユートピア前夜」は、必読の章かと拝察されます。

 

では、ユートピア前夜」の章にご案内いたします。

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