ニュージーランド南島のネルソン湖国立公園を行くこの5泊6日のトレッキング(Travers-Sabine周回コース、下地図参照)は、その計画の段階から、内心を白状してしまえば、気の重いところのぬぐえない行き先でした。というのは、このコースは、小屋使用は可能なものの、それは宿泊だけで、その他のもの、特に食料、料理器具、燃料、寝袋等を持参せねばならず、ことに日数が6日にもなって、それらの重さが相当な負担となるからでした。現に4年前にミルフォードサウンド(3泊4日)に行った際、肩にザック擦れを作って痛い目に遭った体験があります。加えて、自分の体力の減退も日ごろより気掛かりとなっており、私にとってこのトレッキングの実行は、相当にチャレンジングなものでありました。以下は、その6日間の映像レポートです。【なお、別掲でこのトレッキングの体験考をレポートしています】
Travers-Sabine周回コース地図
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二つの湖を始点及び終点とする周回コース(赤点線で表示)で、ボートでの渡しが不可欠。赤数字は宿泊地点。
第1日 1月23日(水)
ボートでRotoiti湖 (標高620m)渡る、トレッキング開始11:00。John Tait Hut (標高810m) 〔地図に1と表示〕着17:30。【標高差190m 行動6.5時間】
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St Arnaud のRotoiti湖畔より、これから行く山並みを望む
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トラバース川にかかるつり橋。定員は一人のみ。
苔むす樹林帯を進む。
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歩き始めて6時間余り、John Tait 小屋が見えてきた。背後には見事なU字形の氷河渓谷が形成されている。
第2日 1月24日(木)
John Tait Hut発9:00、Upper Travers Hut (標高1320m) 〔同2と表示〕着 13:30。【標高差510m 行動4.5時間】
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日本なら、「白糸の滝」というところか。
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Upper Travers 小屋の窓より。
第3日 1月25日(金)
Upper Travers Hut発7:20、Travers Saddle (標高1787m) 着9:20、 West Sabine Hut (670m) 〔同3と表示〕着15:45。【標高差467m登り1117m降り 行動8.5時間】
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Upper Travers 小屋での早朝、日の出とともに月の入りも間もなくだ。
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デイジーのお花畑の中の急登で高度をかせぐ。
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9時過ぎ、ついに、このトレッキング中の最高地点、Travers Suddle (1787m) に到着。正面左の山が、このあたりの最高峰 Mt. Franklin (2340m)。翌日、この山の向こう側の谷を遡行する。
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登ってきた渓谷を振り返る。
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健闘をたたえ合うオッサン二人。片やどこかタモリ風。
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峠からの下山途中で出会った名も知らぬ小鳥。人をおそれず、ほんの近くにまでやってくる。今回の道中、いく度も姿を見せてくれた。
第4日 1月26日(土)
West Sabine Hut発8:30、Blue Lake Hut (標高1190m) 〔同4と表示〕着 13:45。【標高差520m 行動5.25時間】
West Sabine 小屋を出て、Sabine川西俣を遡る。目的地はその水源のブルーレイク。
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道中あちこちでは雪崩の常発箇所があり、デブリが積み上がって通行を困難にしている。積雪期には大いに危険な箇所だ。
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遡行中の谷へは、両岸から、幾筋もの沢が滝をなして流れ込んでいる。
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遡ってきた谷を振り返る。高度も上がっている。目的地までもうわずかだ。
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最後の急登で手こずらされ、ブルーレイクは意外に遠かった。そしてようやく、その姿が目に入った。
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これがブルーレイク。その名にたがわず、湖水はまさにブルーかつ透明。その透明度(水平測定)は70mをこえて世界一という。ちなみに純水が80mというから、まさに天然純水。流入する水はすべて泉の水。写真中央の山はMt. Franklin。
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Mt. Franklin (2340m) 。ネルソン湖国立公園の最高峰。昨日は、この雄姿を反対側のTravers Suddleから遠望した。
湖畔に立って、上流側から下流側へと動画にしました。
湖畔にいるのは私のみで、すべてを事実上の独占状態にできる。耳をすませば、せせらぎ音にまじって、鳥のさえずりが聞こえる。この声の主は何鳥なのだろう。
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山道をふさいでいるこの灰色の角の尖った石は、雪崩の際、沢の対岸から数百メートルも飛んできたもの。沢のこちら側は苔むす樹林帯であり、あたりにはこんな地肌むき出しの石は見られない。
第5日 1月27日(日)
Blue Lake Hut発8:30、Sabine Hut (標高460m) 〔同5と表示〕着19:50。【標高差670m降り 行動11.3時間】
この日は、予定ではWest Sabine 小屋 に再度泊まり、二日かけてSabine 小屋までに行き、その午後のボートに乗るはずでした。それが、翌日の天候の悪化が予想されたため、この二日分を一日で歩き通しました。おかげで、11時間余りを歩き続けることとなり、到着したのは午後8時寸前でした。
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遠ざかるTravers-Sabine山地の山々。
ようやく到着した最後のランドマークの橋。湖に流れ込む寸前のゴルジュ上に架けられいるので、長くはない。目指すSabine小屋まであと一息。
第6日 1月28日(月)
Sabine Hut前桟橋発2:00、ボートでRotoroa湖 (標高449m)を渡り対岸着2:30、同地をチャーター車で発3:30 、St Arnaudを経由し、Blenheim着5:30。
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Blue Lake 小屋とSabine 小屋で宿泊を共にした山の仲間たち。といっても、私の息子や孫娘ほどの世代。
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さよならSabine 小屋。もう歩かなくてもいい。ただ座っているだけで、ボートは湖面を心地よく、対岸へと運んでくれた。