今回の居酒屋談では、読者のひとりが、本サイトの発行人にインタビューをしているかのやり取りです。先の記事で、サイト発行を雑誌発行となぞらえた、そんな話を受けての会話です。
「編集されてる『雑誌』を拝見させてもらいました。」
「いやはや、恥ずかしい限りですな。言ってみれば、リタイア後の道楽みたいなもんで、インターネット上でのまね事です。」
「でも、実際に記事を書き、定期的に発行されています。けっこうな熱意を感じます。」
「発行の定期性は、ことさら努めてますよ。でないと、読んでもらえませんからね。」
「確かに、ネットには無数のサイトがありますね。そして、見るからに『道楽』そのもののにしか見えないものも少なくなく、本気なのかどうか怪しげなのもあります。」
「『本気度』では負けないと信じてやってますが、果たして、肝心の記事の中身が受け入れられるものであるのかどうか、それにはさっぱり自信がない。」
「確かに、拝見するところ、どれもあまり一般向けの記事ではないですね。中には、こんなこと書いていいのかと思わされるものも。」
「週刊誌ではないですが、売れ行きをねらうなら、セックスかスキャンダルですね。タイトルに“セ”の字のひとことでも入れれば、確かに、読者数は増します。効き目あらたかなアイキャッチャーってことですかね。」
「そんな“受けねらい”なんてやってるんですか。」
「まさか! でも、週刊誌レベルではないですが、発行する以上、記事は読んでもらいたいです。ですから、広く一般受けをねらう積りはなくても、一定の読者にはアピールしえるものにしたいとは考えてます。」
「ご年齢柄、リタイア層ですか?」
「確かに、経験談中心の内容になりがちなのですが、意識しているのは、やっぱり、若い世代の人たちです。その人たちの目にとまるなら、それは大成功の一つと思ってます。」
「でも、正直言って、年寄り臭さは否めませんね。だいたい、言葉使いが難しいし、いかにも昭和的。」
「以前、読者から『読んですっとは分からない単語が多く、不親切だ』とのクレームをもらったことがあります。僕としては、言葉って、不親切どころか、辞書を引きひきして覚えてゆくものだって意識でやってきたものですから、そのクレームには閉口しましたね。しかし、読み手の立場になってみれば、読みやすさは確かに重要。ことに、お金を出して買ったわけでもない“雑誌”に、たまたまでも目を通してくれているのですから。」
「でも、受けをねらい、あまりに若者言葉を並べられたら、むしろ違和感が先にたつし、かえってヤバい。」
「本格的な読者調査をしたことがないので正確には解らないのですが、アクセスログから推定する限りでは、年寄り層と若年層との割合は、けっこうバランスしているようにも思います。」
「先の記事に、発行を続けているのは『リタイア後人生の生きがい』みたいなことが書いてありました。どんな風にですか?」
「リタイアした人たちの行き着く天国のような地獄は、社会との接点を失った孤独であり虚無感です。そこでは、人付き合いの面倒もなく結構だとも思うのですが、反面、その接点の有無しだいで、リタイア人生の天地が変わるのは事実です。そういう意味で、このモドキ雑誌の発行で、そうした接点の創出として大いに期待しているのは確かです。ただ、生の人付き合いとちがって、その反応がつぶさに返ってくるものではないです。ですから、数字上の解釈となるのですが、アクセス数の記事別のデータは重要です。」
「それが毎月の分析報告記事となっているのですね。」
「もっと詳しく分析したいのですが、統計分析って、おそろしく手間暇がかかって、いまのところ、その程度にとどまってます。」
「手ごたえはありますか。」
「むろんです。それどころか、いまや実世界が、こうしたネット世界を通じた情報によって左右されつつあります。」
「仮想世界とかメタとか、危ない面も含みながら、それが人間にとっての新たな現実になってきているのは確かですね。」
「それに、私のような年寄りにとって、避けられないやがての旅立ちがあります。それって、思えばまさに仮想世界やメタの世界と言うに等しいところへの旅立ちであって、そしてこれこそがいっそうの現実であるのは、誰も否定できない。」