男だてらフェミニスト

話の居酒屋

第二十話

これって、フェミニズム?

「ねえ、僕って、男のくせにフェミニストなんだけど、気持ち悪い?」

「えっ、あなたって、性的マイノリティだったの?」

「いや、典型的な男と思うけど、男一般じゃない。」

「誰も自分ではそう思うんだろうけど、それでも男のあなたが女を語れるの?」

「いや、それは無理だし、そもそも、フェミニズムって女の牙城。だからその牙城から言えば、男ってセクシストの域から出さしてもらえない。」

「そうか、男だけど、セクシストじゃないですってことか。」

「まあ、セクシストからの卒業はむずかしいと思うけど、フェミニズムを考えることって、けっこう、我が身を振り返ることになるのはたしか。もちろん、一般論からなんだけど、当てはまることは多い。まあ、そんな程度の聞きかじりフェミニスト。」

「でも、本物の男が、現実として、そうは簡単に女の立場を理解できる? 生理なんて、なったことないでしょう。それに、レイプや痴漢の餌食にされたことだってないでしょ。」

「それはそうなんだが、知らず知らずのうちにでも加害していたことの反省はさせられる。」

「そんなに悪さ、してきたの?」

「いや、そちらから言えば悪さだったのかも知れないが、男同士の中でなら当たり前なことはね。つまり、ジェンダーからは逃れられないこと。そういう意味では、男も被害者。」

「そうね。なら、男版フェミニズムが必要かもね。」

「それに、男の役割って、けっこうさみしいものがある。」

「どういうこと?」

「だって、逆立ちしたって、男は子が産めない。この違いは、想像を立ち止まさせるね。男って、頭の中では何でもやってしまえるんだが、自分の体内に命を宿す体験はできない。」

「女に生まれかわるしかないわね。」

「そうなんだが、そういう女たちの牙城たるフェミニズムって、女の防衛が前面に出すぎてる。もっとその生産的な面のフェミニズムってあってもいい。“男たちよ、女になろう”なんて。」

「それはけっこう、フォロワー出してるんじゃない。それに、そういう女としてのプラスの面は、伝統的にも、女専任の分野として大事にはされてきた。けど、今じゃそれすらなくなって、女が子すら産めなくなって人口減してる。」

「僕のフェミニズムってのは、両性にとっての〈性の違い尊重主義〉があってもいいってあたりかな。」

「そういう男も出てきてるって話は、フェミニズムにとって歓迎すべき事態だね。だけど、現実はまだまだ、防衛のためのフェミニズムってのが前線にならざるをえない。世界中でそうでしょ。」

「まあ、僕が女の味方かどうかあやしいけど、防衛ばかりを強調しすぎると、そんな淡い味方も敵にまわしてしまうかも。」

「それって、恩着せがましい自称フェミニズム男たちからよく出される話ね。」

「そう言うなよ。そういう、あっちとこっちという話じゃなく、世の中をスムーズにしてゆくというマナー程度の常識としてのフェミニズムかな、僕のは。」

「そうね。男の国と女の国があるわけじゃないしね。実際、両者がどこでも、入り混じって暮らしているのはたしか。」

 

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