今回をもって、本書『Modern Esoteric 〔現代の「東西融合〈涅槃〉思想」〕』の訳読を完結します。そして、『Future Esoteric〔「東西融合〈涅槃〉思想」の将来性〕』と合わせて、これら二部作の一連の訳読についても、2015年1月の着手以来、ほぼ4年間にわたった作業を終えようとしています。
もう、それほどの年月が経っていたのかと、それは自分でも信じられないほどの早さでした。これも、時を忘れるほどに、その作業に楽しめ没頭できたことの証左でもあります。
また、別掲のように、この数ヶ月、本サイトへの訪問者が驚くような増加を示しているのも、時の経過とともに、本書の議論内容が多くの人たちの関心を着実に引き付けてきた結果ではないかと受け止めています。
そうした訳読作業の解説版としての本記事も、今回が最後となります。ことに今回は、「結語」として、著者ブラッド・オルセンの個人としての考え方や姿勢が著されていて、関心をいっそう呼び起こされます。これまでも、本文やその行間から、彼の人柄を感じさせられてきましたが、私はそうした彼――四十代後半――に、私たちの世代にはない新たな生き方を見出してきました。
私にとっては次の世代にあたる彼の生き方は、私たちの世代のそれとは当然に顕著に異なっています。むろんアメリカ人という出自もありますが、いまや国籍や文化は相対化してきており、日本人の読者にしても、一つの生き方モデルとして参考になりうるものと思われます。
私は、この二部作――合わせると原文で千ページに近い――の訳読作業を進めながら、著者の見識の広さとその新規性、そして奥行き性に注目させられてきました。ことに、Esoteric との耳慣れない言葉に託した彼の視野は、人類のいわゆる「進化論」をくつがえす宇宙的存在への広がりを含めて、私個人の常識を大いに揺さぶるものであり、深い関心を喚起されるものでした。
そしてそれは特に、老境に差し掛かかろうとしている私にとって、自分の今後――それは「《し》という通過点」との人としての不可避な遭遇――を考えるための、従来のいかにも凡庸な生死観を見直す、実に貴重なヒントを提供してくれました。
ただ、それは本二部作では、まだほんの入り口程度の言及――2020年には三部目が発刊される予定――に終わっているようで、その先に期待される量子理論――まさに今日の科学の最先端理論であって急速に発展中――の議論とそれとの関連があります。しかしそれでも、その基本的着眼は、私の上記の不可避な遭遇とも関わって、私にとっての思考の突破口を開ける足掛かりをもたらしてくれました。
連絡によれば、著者は現在、居住地のサンフランシスコを離れ、四カ月間の南アメリカ旅行を続けているはずです。
私も南アメリカには関心をもっており、彼のこの旅行体験を含めた、三部目の出版が楽しみに待たれるものとなっています。
それでは、本書「結語」の章にご案内いたします。