メディア操作(その2)

〈訳読‐2〉「東西融合〈涅槃〉思想」の将来性(その10)

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企業力のコントロール

テディー・ルーズベルト大統領は、一世紀以上も前にこう述べていた。「これらの国際銀行やロックフェラー・スタンダード石油は、従順な記者クラブ員とさせるか、あるいは、隠れた政府をなす強力な利権集団の誘惑を拒否した政府官職を追放させるかして、新聞や新聞のコラムの大半をコントロールすることに腐心している」。そして彼と議会は、シャーマン・反トラスト法を首尾よく成立させた。この法は、急成長する企業を分割し、金権がらみの影響を制限する打撃を与えるものであった。彼の政府は、また、企業と金持ちに、国を運営する公正な税の分担を強いる累進的所得税制を成立させた。同政府は、労働組合の結成を許す法を通過させ、この国に中産階級を生み、アメリカ民主主義を世界の羨望の的とさせる国の繁栄と安定を可能とした。議会は、他の成果とともに、上院の直接選挙を成立させ、1907年、連邦政府政治家と連邦議員候補への企業献金を禁じる法律を通過させた。

テディー・ルーズベル政府の業績はしかし、こうして反トラスト法が成立した以後、100年間にわたって後退させられてきた。今日、連邦高裁でさえその憲法上の拠り所を除去し始めている。〔現連邦高裁判事である〕アリト、スカリア、ロバーツそしてクラレンス・トーマスの意見は、常に、個人の権利に対する企業の権利を優先させている。実際に、企業対政府の争いであってすらも、企業が勝っている。この国の連邦高裁は、選挙で選ばれた大統領より、エリートの金権によってコントロールされた操り人形を有利とする判決をしている。最終的には、連邦高裁は、上述のように、企業に連邦議員候補に献金することを禁じる百年来の法律を、事実上、撤廃した。今やこの一世紀で初めて、企業は、政治行動委員会(Political Action Committee)あるいは特別政治行動委員会(Super PACs)を通じて、連邦議会選挙運動に津波のような金の洪水を投入することが合法となっており、多くのアメリカ人は代議制政府の終わりが始まっていると見ている。

簡略な米国史研究を続けると、1928年に成立した公平主義政策(Fairness Doctrine)法は、電波は国民に属するものと明記した。ゆえに放送会社はそれを使用する許可を得ねばならなず、それは、国民に知らせ、公共の利益を高め、民主主義を促進する時にのみに限られていた。これが6時の夜のニュース番組の開始のきっかけとなった。だがネットワーク会社はそれを望まず、公共放送局をのぞき、いまでも、内外のニュースに30分を当てるのみである。ネットワーク会社がニュースに時間をさかない理由は、ニュース製作部門が慢性的に赤字部門であるからだ。しかし、午後6時にニュースを放送することは義務であり、今日でも、音楽番組局の流すニュースは公平主義政策の遺産である。議会は、メディア末端局が放送に電波を使う時は公平に知らせる義務をおうことを主張していた。そしてもう一つのルールは、企業の合併と支配を避けることである。しかし、こうした二つのルールは、いまでは失われてしまっている。

 

公平主義政策の死滅

アメリカの報道の譲り渡しは、1987年、ロナルド・レーガン大統領〔任期1981-1989〕が公平主義政策を廃止した時に始まった。そして、マーク・S・フォーラー――レーガン政権下の連邦通信委員会(Federal Communication Commission)委員長――は、再び、一種の逆転した二枚舌を使って、政府に表現の自由の過度の制限を求める公平主義政策は憲法修正第一条に違反している、と述べた。この論争の騒ぎの中で、ある地方控訴裁判所は、「欠陥ある修正」と言及し、それは実際に法的拘束力のあるものではないと論じることで、成文法の効力に疑問を呈した。ともあれ、議会は圧倒的多数で、公平主義政策を復活する法律を通過させた。しかし、レーガン大統領は同法に拒否権を発動し、続くジョージ・H・W・ブッシュ大統領によるさらなる拒否権によって、そうした努力は脅威にさらされた。かくして二枚舌を羅列したリストには、「自由は不公平である」との、さらなる一項が付け加えられた。

レーガンは、おそらく知らずしらずのうちに、コントロールの多様性と多層性を取り払ってしまった。彼は、自身が選出されることを助け、そして今日では完了しているAMラジオのすべてを引き継ぐことを望む、キリスト教右派に有利となるよう公正主義政策に拒否権を使った。会話ラジオ局や大手スタジオの長の95パーセントは同派によってコントロールされており、レーガン選出の後ろ盾となった。彼らの目標は、巨大メディアの結束である。ルパート・マードックもまたレーガンが公正主義政策の追放に共謀し、以来、「キツネ(F0x)ニュース」が嘘を流すことは実質的に容認された。かくしてメディアの倫理は著しく崩壊し、フロリダ州高裁は、Foxがテレビニュースで虚偽を流すことを、いまや合法との判断をくだしている。

最近では、フロリダにおいてFoxニュースが自社のジャーナリストによって、ニュースで嘘を言うよう求められたと告訴された事例がある。この問題は、同記者たちが取材した発がん物質の疑いのあるモンサント社の製品に関するもので、その組換えウシ成長ホルモン(rBGH)は、いくつかの調査で有毒性が示され、家畜への注射に常用されているものである。この告訴をおこし、後に解雇された二人の記者によると、彼らの告訴は、その話題が放送されなかったからではない。「フォックス13〔総合格闘技の中継番組〕が、フロリダ州のミルク供給に含まれている合成ホルモンを明かす話題を没にしようとはしなかっからではなく、我々が告訴状に詳細に述べているように、我々は繰り返し、不正確で不誠実に書き換えられた話題を、そのまま取り上げて、説いて聞かせるように放送するよう命じられたからである。我々は、その指示を、モンサント(そのホルモンを製造した有力な製薬会社)と、フロリダの酪農と食品産業関係者と思われる者たちによる極めて高レベルの企業要請の後に与えられた」。つまりそのジャーナリストたちは、モンサントと、そうしたミルクを飲んだ子供たちの安全に影響する誤った情報に手を貸す「総ぐるみ」宣伝を擁護するフォックスに対し、義憤を表したのであった。だがフォックス(そしてモンサント)は、フロリダ州高裁が、結局はその「ニュース」のために宣伝費を払っているのはモンサントであるがゆえ、テレビ放送において嘘を述べるのは違法ではないと宣告し、その訴訟に勝利したのであった。

フォックスニュースは、カナダでは放送することが許可されていない。それは、カナダ国民がいまだに公正主義政策を支持しているからである。カナダでは、嘘を放送することは違法である。英国においても、同様な規定があり、他のほとんどのヨーロッパ諸国でも同様である。しかし米国では、私たちは公正主義政策を失い、その結果、私たちは、リンジー・ローハン〔自らのスキャンダルでメディアの標的となっている歌手・女優〕の次第な情緒崩壊や、ジャスティン・ビーバー〔カナダのポップシンガー、俳優、シンガーソングライター〕の気付きについては知っているものの、その程度を増す異常気象や巨大ハリケーンの原因については、ほどんどなにも知らない。そうした支配者らは、アメリカ人は羊にように行動するといった軽蔑的前提をもって運営にあたっている。彼らは、有権者は単純な頭の持ち主で、「政府は悪く、税金は高すぎ、自由市場が最適」というありきたりな解答だけを求めていると確信している。これが「確証偏見」で、人々はいっそう、それが自分達をイデオロギー上の落とし穴ににはまり込ませていると気付きはじめている。ゆがめた情報の押しつけがそこにあり、そうした聞こえの良い固まった情報に疑念をもつアメリカ人が増えており、主要な情報が疎んじられる中で喪失されていると認識し始めている。

支配者らはまだ全面的自由ではなく、失った自由の回復に立ち向かう異議申し立てもまだ手強い。繰り返すと、この国の14,000のラジオ局と2,200のテレビ局の事実上のすべて、80パーセントの新聞、屋外広告の過半数、そして大手インターネット・プロバイダーの大半を、5社の巨大企業が支配している。それは結局、ほとんどのアメリカ国民がニュースとして受け取ることを、5人の人物が決定しているということとなる。その企業文化の中で、その株主への義務が過剰となっている。彼らは、民主主義に有用な情報――それをもって国民は共和国の最大国益を番組から発見する――を放送することで公共の利益に仕える、という義務を負っていることを忘れている。なんと奇妙な考えだ。さらに彼らは、私たちが求めているものは娯楽と考え、それを提供している。アメリカ国民は、西洋世界でもっとも娯楽に興じ、もっとも情報に乏しい人々だと言われている。私たちは、自分たちの民主主義――その政治的色合いに巨大な額の企業資金が洪水のように投入されている――が崩壊の危機にあることを議論するより、遥かにたくさんの時間をマイケル・ジャクソンについて話すことに費やしている。特別政治行動委員会は企業の力をいっそう強力にし、いまや、姿の見えぬ献金者が政治的反対派を作ることも潰すことも可能なのである。さらにいまや、連邦高裁は企業を個人として認め、アメリカ国民と同一の憲法上の固有の権利すら所有しているのである。

 

動物脳の刺激装置

ロバート・ケネディー・ジュニアは、公共テレビのタビス・スマイリーのインタビューに答え、私たちのディレンマを以下のように明解にした。「この国のマスメディアは今日、好色な興味をかきたて、セックスとセレブのゴシップのみに興じるよう、私たちの動物脳へと働きかけている。他方、重要な出来事についての探究的報道は急減している。過去20年間に、探究的記者たちの85パーセントが職を失った。その結果、ブッシュとチェイニー政府は、米国がイラクへの第二の侵略を違法かつ不正に行っていることを世界中が目撃している中で、アメリカ国民には、『我々は800年昔のメソポタミアの拳闘競技にのぞもむところだ。路上にまかれたバラの花弁の中で彼らと対決するのだ』などと放言して、そう信用させようとしている」。

 

1.4.1 media do as you're told

「使命を記事に」と告げている。しかし、その情報機関のピラミッドの頂上には誰がおり、何を載せ、何を載せないのかは誰が決めているのか。誰かが私たちに、つね日頃から、何を考え、買い、嫌い、投票するかを告げている。「羊のような人たち」がそれを真実と思うまで、何度でも嘘を言え。毒を抜かれ、十分編集された主流メディアは、政府のプロパガンダのレンズを通し、あるいは、企業アメリカのいかにも赤裸々な言いぐさとして、事態をきわめて違った風に見る。(with permission, (c) Brad Olsen, 2015)

 上のポスターは、国土安全保障省のもので、そのスローガンを訳すとこうなる。

使命を記事に

ありがとう、ニュース放送局

我々は、君たちなくして、国民を導くことができない

 

要約すると

私たちは、こうした経緯に共謀(往々にして気付かないまま)させられている状態を見直して熟慮し、そこからの脱出に心しよう。人間がもつ集団意識の一員として、私たちの大半は、怠慢がゆえ、あるいは、私たちの無頓着な考えや行動がゆえ、無意味な二極分解を選んできてしまっている。人目を盗んでなされる情報が、恐れをかきたてることへの収斂は、マスメディアの第一の術策である。1977年、ワシントンポスト紙の探究記者カール・バーンシュタインが、CIAはメディアをコントロールする全面的な努力を行っていると暴露して以来、私たちは、大衆的視聴をつんぼ桟敷にすることが、まさに既存権力によって綿密に考察され、組み立てられ、そして実施されているとの話を知ることとなった。そして、事実上、CIAによってなされたことはすべて、国家安全保障の覆いのむこうに隠されているため、どんな決定的情報を私たちに与えるのかを、だれがその決定責任をもって行っているのか〔それすら不明である〕。おそらくより重要なことは、私たちに得られなくされているのは何なのかである?

思考は、焦点となるべき、創造の源泉である。私たちはまさしく、私たちが作り出したものを得ている。マスメディアのおこなうコントロールは、支配エリートにとって、事実上その〔大衆への〕催眠効果がゆえに必要とされる。私たちはひとつの社会として催眠状態にあり、いろいろな面で、この惑星の今日の状態に釘付けにさせられている。私たちは、提供される不健康な食物――テレビの力を通じた中毒状態――によってその精神は毒されれいる。そこには、暴力、ポルノ、強欲、嫌悪、自己中心、「いやなニュース」の洪水、社会の敵、「テロ行為」等があふれ、メディアによる強迫的中毒症状をていしてる。テレビのフラッシュ〔一瞬の映像〕の使用は、無意識レベルで作用する心理的刺激として採用されている。銃、血、そして恐ろしい役を演じる俳優は、予告されるテレビ番組の共通した釣り餌である。

最後に、何か、美しくくて純なものを見たのはいつだったろう。この惑星は、私たちのそれについての集団的考えがゆえに、この道を進んできている。私たちは、私たちの将来への考えがゆえにではなく、不正を見ていながら「回避の道」を求めた繰り返される無為のために、その共犯となっている。私たちは、だれもその無意味さを食わされている。この惑星をそうした無意味な二極状態に維持することが、メディアにとっての主目的である。そううして、お互いの前向きな献身の反対物として、私たちは自分勝手という旧弊にひたり、受け身な目つぶりをなすよう、仕向けられている。

私たちは、静かな時間を持ち、賢明な決断の主である内なる自分に従うことで、こうした無意味な習慣を断ち切ることができる。外界に気を奪われていること(自分を犠牲者にさせる誤った態度)に背を向け、つねに私たちの内部であり、選択すべきところに向かうことである。他者やこの惑星への働きかけのガイドとなるべく、そのより高い知恵に近づくことと癒しへの志向から得られるものをもって、私たちは、無意味さと恐れを消し去り、愛と思いやりを持ち続けることができる。

 

【この章終了】

 

参考文献

 

Bagdikian, Ben H. The New Media Monopoly. Boston: Beacon Press, 2004.
 
Robert Kennedy, Jr. interviewed on Tavis Smiley:
http://www.pbs.org/wnet/tavissmiley/interviews/environmental-advocate-robert-f-kennedy-jr/
 
 
 
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Future Esoteric: The Unseen Realms by  Brad Olsen

http://cccpublishing.com/FutureEsoteric  www.bradolsen.com

with permission, (c) Brad Olsen, 2015


 
 
 
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