「思い当たる節」のある話

〈連載「訳読‐2」解説〉グローバル・フィクション(その40)

今回訳読する章『地球外の惑星』では、私には大いに注目させられる議論が展開されています。それは、「地球痴呆化機構」というタイトルの節にあり、その要点は、一部のETたちが、地球を回る衛星に仕組まれた装置や、月や火星に密かに存在する彼らの基地の施設を使って、地球人の脳の「痴呆化」を図っているとの仮説です。

この節の原題は「Amnesia Mechanisms」というもので、直訳すると「記憶喪失機構」となります。しかし、それでは真意が分かりにくいので、「地球痴呆化機構」と訳してあります。

すなわち、この「機構」とは、地球の支配をたくらむ悪意のETたちが、自分たちの高度な電子装置をもちいて特殊な電磁波を地球に送り、人間の脳に作用させて「洗脳」し、人間の脳の働きのレベルを一定程度以下に抑えているというものです。しかもそれは、一万年以上も昔の古代から行われているというのです。

私は、この議論に接し、ある思い当たる事柄をいくつか連想させられています。

というのは、ひとつには、一般には「超能力」とか「超自然能力」とかと呼ばれている特殊な能力についてであり、もうひとつには、私が別の記事でも触れたものですが、人間の記憶能力には、現在私たちがそれを記憶とよぶ「情報データ」的な記憶保存力以外に、ある事柄や状況の意味や感じをそのままに記憶しておく、私が「感じ記憶」とよぶ、もう一つの記憶があるのではないかということです。そしてどうやら、この「感じ記憶」が相互に結び付けられて――むろん「情報データ」の繰り出されますが――、いわゆる「直観」とか「予感」といったものが呼び出されるのではないか、というものです。

あるいは、私の知人に、少年のころには、自分がそこにいたわけでもないのに、その光景が見えたという、いわゆる「千里眼」とか「遠隔視野」といった能力があったのに、いつのまにやらその力は消えてしまったという人がいます。

世間には、そうした「子供じみた」話は、大人になってからは通用しないとして、それが無くて当たり前といった風潮があります。

しかし、それがもし、この「地球痴呆化機構」の企みによって、誰からも広く消滅させられているのだとしたら、話は俄然違ってきます。

そして私なぞは、そうした「洗脳」によって、人間の脳の働きは隷属的な機能ばかりに抑えられ、たとえば、「右にならえ」のロボット人種ばかりをこしらえている、とでも結論したくなります。

ともあれ、もし、そうした「痴呆化」が取り除かれたとするなら、人間は今日の常識とされている能力をはるかに上回る力を発揮するはずであり、そういう人間の作る社会がどれほどに光り輝くものであるかは、容易に想像されるものであります。

 

それでは、この「地球痴呆化機構」の節を含む、『地球外の惑星』の章にご案内いたします。

 

 

 

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