豪法務長官のレイプ疑惑もみ消し

相次ぐ性暴力に立ち上がる女性たち

今、オーストラリアの首都キャンベラは、政界に相次ぐレイプ疑惑で激震している。現国防大臣〔女性〕の職員が深夜まで勤務後、大臣オフィスで同僚にレイプされたとの告発に続き、現職の法務長官が33年前のレイプを訴えられていたが、昨年その被害者が自殺して疑惑自体は法律上、迷宮入りになろうとしている。被害者が苦渋の訴えを起こしても法の壁は冷たく厚い。日本でも塗炭の苦しみや弁護士の無私な献身をもって100年来の法律が改められている。

オーストラリアの現法務長官をめぐる疑惑では、被害者の女性は、事件当時はまだ高校生で、その聡明さから将来の女性首相とすら嘱望された人物であったという。だが、事件を境にその前途は暗転し、取り上げられない訴えに絶望してうつを病み、ついに自ら命を絶ってしまった。

これらは、3月8日の国際女性デーを前に公表され、あたかもその日の重要性を広く知らせることともなった。

こうして、レイプ疑惑があぶり出す問題の所在をめぐって、根深い亀裂と不公平が、オーストラリア社会に深い影を落とし始めている。

この法務長官のケースで言えば、時の経過による立証の困難さや被害者の自殺で、所管警察は今年初め、その告発の検証を打ち切る決定をしている。

しかし、それほどにも期待された人をすら自殺に追い込むレイプ犯罪の訴追は、オーストラリアでも、その法的要件が被害者に厚い壁となって立ちふさがる。事件は、1988年、二人が、オーストラリアの高校生代表として特別に、国際大学弁論大会に参加した後に起こった。言わば輝かしい出発点を共有していたはずの若い二人であった。その片方が他方に対し、かくも過酷に明暗を分ける原因を作った。エリート意識の傲慢ふんぷんな行為だが、その罪が問われないばかりか、その本人が法務長官にまで出世するに至っている。同長官は記者会見で、「何もなかったこと」と告発が虚偽であるかの発言をしている。

またオーストラリアでは、去る1月26日の建国記念日には、教師からのレイプを告発して闘い抜いた女性に本年のオーストラリア人賞が授与されたばかりである。

その記憶も生々しい折でのこの事件もみ消しの顛末に、オーストラリア政治の偽善性すら露呈している。

 

全土で抗議集会

こうした社会の頂点ですら発生する性暴力事件の繰り返えしに、3月15日の月曜日、オーストラリア全州で抗議集会「正義のための行進」が催された。平日の昼間にもかかわらず大規模な(全国で計10万人)集会となり、社会の関心の高さを見せつけた。

そのうち、首都キャンベラの国会議事堂前広場で開かれた集会(5~6千人が参加)には、その建物の中で被害にあったその人、ブリタニー・ヒギンズさんが自ら登壇し、その複雑な胸中を聴衆に語った。

声をつまらせながらも聴衆に語るヒギンズさん(AFR紙より)

ヒギンズさんは語った。「あなたの体験の主となって、恥辱の汚名からあなた自身を開放してください。私たちは共に、この国会の中の職場文化へ、実際の意味のある改革を行い、それを成功させれば、次世代の女性たちは、オーストラリアのすべての職場で、より安全で均等な恩恵を獲得することができるでしょう。」

「私はこの人生が変わるほどの事件に遭遇しただけではありませんでした。私は政治問題とされていたのです。現政府の元大臣〔女性〕は、私にこう言いました。もし若い女性が国会の事務室でレイプに会ったなどと告発したら、それは新聞の一面ダネになるのよ。」
 「そういうことではありません。私は、彼女が問題を理解していないと思います。オーストラリアの女性が経験している性暴力への、恐ろしい社会的受容があるのです。私の話は、それが議会の場で起こり、そしてどこででも起こっているという、そうした女性の痛みを報じるためという唯一の理由で、一面の記事になったのです。」

「これは政治問題ではありません。人間の問題です。私たちはみな、この国にどれほど性暴力がはびこっているかを学びました。今は、与野党の両党首が、公表を避け責任逃れをするのをただちにやめる時です。実際に問題に対処する時です。」
 「私は、自分が黙っていると、そうした行為を受け入れる文化の共犯者になると感じたので、自分の体験を話すことを選びました。」

そして聴衆に「自分の線をはっきりと引き、それを冷酷に守ってください」と訴えた。

それに応えて聴衆からは、「ブリタニー、あなたを信じるよ」との声が一斉にあがった。

AFR紙より

 

写真左は、シドニーでの集会に参加した引退看護師と両性間カウンセラーの二女性。手に、「男たちよ、男になろうとするのではなく、公明正大であろう」とのメッセージを掲げている。

 

この日、問題の現法務長官は、彼の疑惑を報じたABC放送を、名誉棄損で訴えた。

一方、キャンベラ集会では、与党、野党の両党に、同疑惑を晴らす独立調査機関の即座の設置を要求した。

 

 

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