今回の「ビッグブラザー」の章が指摘しているのは、まさに、現在の世界をおおういかんともしがたい悲惨さの根源だろう。
著者のオルセンの論じる米国社会の実像が真実だとするなら、日本の存在とは何なのだろうか。そうした米国の実像からは分離されたものなのか、それとも、それに追随しているどころか、その下敷きにされているのだろうか。戦後史を見るだけでも、それを無関係とすること自体、非現実であろう。
すなわち、現在の日本の目に余るような、政治的、経済的な劣化現象を見れば、まさにその影響下にあるというのが当たっているだろう。
この章を読んで想うのだが、ほぼ半世紀前、私が二十台の頃に感じていた自分の存在の〈二重性〉という受け止め――本章では「二重思考」と呼ばれている――は、そうした全体状況の私の上への反映であったと、いまさらながらに再認識される。それほどに、その連関は深く長いのだ。
そして、その巨大な意図と仕組みが、類推だけでなく現実の構造として克明に描かれているのが、この章である。
お忙しいお方は、最初の導入部に目を通すだけで、納得するものがあるはずです。
それでは、その「ビッグブラザー」の章にご案内いたします。
