「祝賀一色」に異論を抱く

「10連休」に見られた『天皇の陰謀』読者数の顕著な増加

天皇の代替わりを祝うオシキセ「10連休」が終わりました。この間、私の住むこの南半球まで、太平洋を渡ってその祝賀一色の津波が押し寄せてきていました。本稿は、日本のメディアが伝えるその「一色性」が、どうやら作為的で作られたものに過ぎなかったこと――言い換えれば政治的演出と見るべきこと――を、本サイトを訪れる読者数の変化より検証しようというものです。

全般に本サイトが扱う記事は長いものが多く、それを読むには、まとまった時間が必要となります。そのためか、毎年の夏や冬のいわゆる休暇シーズンに、訪問者数が増える傾向があります。先にも書いたように、今回の特例な「10連休」の際でもその増加傾向が見られたのですが、それに終わらず、ことに5月5日には一日訪問者数が2,030人にもはね上がり、本サイト始まって以来の破格の記録となりました。

そこで本稿ではで、本サイト掲載記事のうちから特徴的な『天皇の陰謀』の記事を取り上げ、それへの訪問者数合計の全体に占める割合の変化を見て行きます。そしてその変化の度合いを探ることを通じて、その「一色性」が、少なくとも本サイトの読者数に関する限りは、決して事実ではなかったことを述べるものです。

 

こうした証明の材料には、ウェブサービス・プロバイダーが提供する毎日のデータを用いますが、訪問者数の記事別明細は提供されないため、ヒット数を用います。ただ、このヒット数は、検索エンジンのロボットやシステム運用上のヒットなども含むため、その総数は訪問数のおおむね6から7倍となります。ともあれ、変化を追う比較の上では、それらのどちらを用いようと基本的な違いはありません。ただし、ヒット数を用いる場合は分母が大きくなるだけに、特定記事へのその変化は数値的に小さく出ます。そこでむしろ、その変化の変動率(つまり実数上の変化率)が目安となります。

そこで、この「10日連休」期間の上の特定記事へのヒット数を、今年1月から3月までの3カ月平均値と比較します。いったい、この10日間では、過去3カ月平均と比べて顕著な変化が見られたのかどうか、そこがポイントです。

下表はその比較分析の結果です。

このように、「10連休」中は、その関連記事へのヒット数の全ヒット数に対する割合は、4.69から5.92へと1.23パーセント増加しています。さらに、上記のように、この数値は、母数の大きさがゆえに、数字上ではわずか1パーセント少々の増加ですが、実数上の変動率という点では 1.23/4.69×100=26.2パーセント増という大きなものです。つまり、四分の一以上の増加であったわけです。

【追記】 グーグルアナリティクスを使うとページビュー数による比較ができます。それによると、この10連休中は、1月から3月の3ヶ月間の10日間平均より37.6パーセント増です。なお、ページビュー数は、同じ訪問者でも違ったページを開けるとカウントされるため、訪問者数より大きく出ます。

これまでにも繰り返し述べてきているように、対象とした『天皇の陰謀』という文献は、日本人にとっては何とも“苦痛”な本で、決して気やすく手に取れる本ではありません。米国人著者になるここまで客観的かつ克明に日本の天皇制度を描いた――日本人にはとても書けない――本は、少なくとも私の知識の限り、他に類例は見られず、もっとも“重たい”本と言えます。

そういういかにも寄り付きにくい当文献にさえ、この十日間に、26パーセントという大きな増加を伴う読者数変化が起こったというのは、これは並みのことでも、偶然のことでもないと言えましょう。

そういう意味で、その祝賀ムードが、決しては「一色」ではなかっただけではなく、その必要があったのかどうかをあらためて問うて、この困難な本への関心の拡大にも結び付いていたと判断されます。

またこの本は、読者のみなさんのご協力をいただき、6年前の掲載開始以後も刻々と翻訳上の修正が加えられて(事実上のオープンソース化)、いっそう分かりやすく、訳の正確さも増してきています。

 

ところで思うのですが、今回の「代替わり」も含め、米国の「9.11」、英国の「ブレクシット」や米中貿易摩擦等々、策にあぐねた政治家たちによって、世界の政治はどうも《やらせ》の集大成に化して来ている感があります。そもそも、政治とはそういう虚像作り――あるいは「やったもの勝ち」――が避けられないのですが、偽装に流され取り返しのつかぬ惨事をまねかないよう、ことに若い皆さん、用心してください。

 

 

 

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