長命の秘訣は4分間のきつい運動

オールディー発達学」海外文献

老人学=資料編=

【ニューヨークタイムズ記事のAFR紙(31 December 2020付 )への転載】

心拍数を上げると、寿命は伸びるのだろうか?

その可能性が、運動と死亡率に関する新たな野心的な研究のメインテーマとなっている。この研究は、運動と死亡率のこれまでの最大かつ最も長期間の実験的研究で、運動する高齢の男女は、それがほぼどんな運動でも、早期に死亡する可能性を低めることを示している。

しかもその研究では、その運動の一部が激しい場合、早期死亡のリスクはさらに低下し、しかも人々の生活の質が高まることも明らかになった。

もちろん科学者たちは、これまでにも、活発な人々が長生きの傾向があることを知っていた。過去のいくつか研究によると、定期的な運動は、たとえ運動が週に数分に過ぎないとしても、長命の促進に明らかに関連している。

しかし、これらの研究のほとんどは観察的で、ある時点での人々の生活内容より、その時どれだけ運動したかを調べ、後に、彼らがいつ死んだかを調査した。

このような研究は、運動と長命の関連を特定することはできるが、それが実際に運動によるものかどうかを証明することにはならない。

運動が長命に直接影響するかどうかを調べるには、研究者は、ボランティアをつのり、長期のランダム比較試験に参加してもらう必要がある。そして、運動する人と、違う運動かまったく運動しない人に分けて調べる必要がある。

その後、研究者は、各グループの統計的比較を可能とするに十分な死亡数が得られるまで、これらすべての人々を何年にもわたって追跡しなければならない。

しかし、そのような研究は非常に複雑で費用がかかるため、広範に行うには大きな困難が伴う。そうした実験調査の過程で、もし死ぬ人がほとんどいなかった場合、それは役に立たないものとなる。

それは、研究される人にとっては自然でも、死亡率を研究することを望んでいる科学者には問題である。わずかな死をもって、運動が長命に意味のある影響を及ぼしているかどうかを示すことはできないからである。

 

5年間の調査

しかし、これらの障害は、ノルウェーのトロンハイムにあるノルウェー科学技術大学の運動科学者のグループを思いとどまらせなかった。というのは、彼らは、他の機関の同僚と一緒に、さまざまな種類の運動が心臓病やフィットネスに与える影響を研究しており、次のステップは明らかに長命との関係を見ることだと感じていたからであった。

ほぼ10年前、彼らは、後の2020年10月にBMJ(英国医師会雑誌)に発表される研究を計画し始めた。

彼らの最初のステップは、トロンハイムのすべての70歳代の人々を招くことだった。 それは、科学者たちが、高齢者を対象とすることで、死亡率調査は有用なデータを得る可能性が高いと考えたからであった。当然、高齢者の方が若い人よりも死亡数が多く、研究対象グループ間の長命の違いを比較できるからである。

1,500人以上のノルウェー人男女が参加した。 これらのボランティアは、おおむね、ほとんどの70歳代よりも健康であった。

心臓病、ガン、その他の症状を持っている人もいたが、ほとんどの場合、定期的に散歩したり、運動を続けていた。肥満の人はほとんどいなかった。その全員が、いっそう定期的に運動を開始し、その後5年間、継続することに同意した。 

科学者たちは、被験者の現在の有酸素フィットネスと生活の質に関する主観的な感情をテストし、そして、3つのグループにランダムに割り当てた。

第1のグループは、調査条件として、標準的な運動ガイドラインに従い、ほとんど毎日、30分歩くか、あるいは動くことに同意した。(科学者たちは、対象グループに5年間座りがちであるように求めることは倫理的にできないと判断していた。)

第2のグループは、週に2回、50分の長いセッションでゆるい運動を始めた。

第3のグループは週2回の高強度インターバルトレーニング(HIIT)のプログラムを開始した。その間、彼らは4分間、激しいペースでサイクリングまたはジョギングし、その後4分間休憩し、その組合せを4回繰り返した。

ほとんどすべての人が、割り当てられた所定運動を5年間つづけた。その間、科学の厳密性にもとづき、定期的に研究所に出頭して、チェックイン、テスト、および監督下のもとのグループ運動を行った。

 

中程度の結果

その間、科学者たちは、対象者の中の一定数が、地元のジムでのインターバルトレーニングクラスを、自らの意志で、明らかに楽しみのために始めていたことに気づいた。 他方、残りの人たちは彼らのルーチンを変更しなかった。

5年後、研究者は死亡登録をチェックし、そのボランティアの約4.6%が調査期間中に死亡していたことを確認した。これは、全ノルウェー人口の70歳代の率よりも少なく、これらの活動的な高齢者が、全体として、同年代の他の人よりも長生きであることを示した。

しかし、科学者たちはまた、わずかではあるが、グループ間の興味深い違いを発見した。 第3の高強度インターバルグループの男性と女性は、第1のグループの男性と女性よりも死亡する可能性が約2%低く、また、長くゆるい運動グループよりも死亡する可能性が3%低かった。

実際、第2の中等度のグループの人々は、第1グループの人々よりも死亡した可能性が高かった。

インターバルグループの男性と女性も今ではより健康であり、他のボランティアよりも生活の質が大幅に向上したと報告している。

この新研究を主導したノルウェー科学技術大学の研究者であるドルテ・ステンスボルドは、もともと、きついトレーニングは――インターバルグループとコントロールグループ両方のルーチンの一部――、ゆるいトレーニングのみよりも早死に対してわずかにまさる優位性を示すと述べた。

もちろん、運動は万能薬ではないと彼女は付け加えた。 何人かの人々は彼らのトレーニングプログラムが何であれ、病気で死亡した(運動中に死亡した人はいない。)

この研究はまた、とびぬけて健康的であるノルウェー人に焦点を合わせたもので、おそらく残念なことに、私たちのほとんどはノルウェー人ではない。 また、まだ70代でもないかもしれない。

しかし、ステンスボルドは、この研究の成果は私たちのほぼ全員に広く適用できると確信し、「私たちは、きつい強度の運動を含めるように努めるべきです」と彼女は言う。

「インターバルはほとんどの人にとって安全で実行可能です。そして、人生に幾年をも加えることは、ただ年月〔の問題〕だけでないということが健康な老化の重要な側面であり、この研究におけるHIIT法のより高いフィットネスと健康のもたらす生活の質は重要な発見である」と述べている。

 

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