『「東西融合〈涅槃〉思想」の将来性』を「訳読」する

〈連載「訳読‐2」解説〉グローバル・フィクション(その1)

新たな本と人に遭遇しました。その本とは、 『Future Esoteric』。そしてその人とは、その著者のブラッド・オルセンです。しかし、この本の日本語版はまだ出ておらず、自分で訳して読むしかありません。例の「訳読」の再開です。7年を費やし2年前に完了した『天皇の陰謀』に続く、「訳読」シリーズの第二弾です。おそらく、この仕事も容易ではなく、何年かを要するものとなるでしょう。そして彼は、私の「訳読」結果を、当サイトで出版することを承諾してくれました。

そこでまず、この原題を『東西融合〈涅槃〉思想の将来性』と訳しました〔注〕。第一弾の『天皇の陰謀』の訳読で、その解説シリーズを「ダブル・フィクション」――天皇制という第一のフィクションと戦後日米関係という第二のフィクションという、私たちの世界の位置付け――と名付けたように、それに続くこの第二弾の位置付けは、戦後覇権国としての米国が築いた現代世界そのものを「フィクション」ととらえる視点です。

〔注〕 原タイトルである Future Esoteric の Esoteric は、辞書上では、密義とか奥義とかとの意味です。それを、著者の西洋、東洋の両世界にわたる含蓄から、ちょっと長ったらしいですが、「東西融合〈涅槃〉思想」と訳してみました。なお、この〈涅槃〉(ねはん)とは、煩悩を断じて絶対自由となった状態で、仏教における理想の境地のことです。

著者のブラッド・オルセンによれば、それは途方もなく巨大な嘘で塗り固められた、もはや幻としか呼びようのない世界です。

いまだに日本が「ダブル・フィクション」に縛られているように、今やこの地球全体も、この「巨大フィクション」に拘束されています(そういう意味では、日本は三重の虚構に閉塞されている)。

本書に展開される議論は、そうした巨大幻想の世界を暴く、経済に始まり政治、環境、宇宙、そして倫理や愛にまで至る、私の知る限りでは、最も広い次元を視野に入れたものです。

本書の「もくじ」を別掲載しますが、その各題目を見わたすだけでも、その規模がどれほどのものかが伺えます。

そこで、この「訳読」を案内するこの連載シリーズを、表記の副題のように「グローバル・フィクション」と名付けました。

 

その第一回として今回、現代経済にまつわるもっとも重大かつ無自覚なフィクションを解明した章、「お金が消える時」の訳読を掲載いたします。

一読いただければ見出されるように、これはいわば、壮大な理想論と言えます。まして、本書への最初の入口でこの議論に出会えば、これはみごとな生硬論と見なされ、今後への興味を薄れさせることとなるかもしれません。しかし、「もくじ」からお判りいただけるように、著者の議論は広くかつ多次元です。どうか、この一章の印象を全体のものとされないよう、「訳読」提供者として、切にお願いしたいと存じます。

 

なお、この訳読に当たっては、著者のブラッド・オルセンより、それを本サイト上で出版する承諾を得ましたが、それには、今お読みいただいているように、《フリー出版》する――つまり“ただ読み”を認める――許可も含まれています。著作、出版を生業とする彼が、私がスタイルとするこの“無償出版”に承諾を出すとは並大抵のことではありません。

そうした判断がどうして出されたのか、その理由も今回の訳読に説明されています。少なくともそれは、今日の“マネー支配”の世界を越える新次元の視野を与えるものです。

また、本サイトの前々号と前々々号に掲載した「総合統一場理論」も、同書の一つの章をなすものです。あわせてご案内いたします。

 

では、その「お金が消える時」の章にお進みください。

 

Bookmark the permalink.