仲良し日豪

憲法改正考(その10)

この7月7日から10日の安部首相の訪豪は、日豪経済連携協定という難題に、ぎくしゃくしながら、かろうじて達した合意にもかかわらず、当地で報道される両国首相の様子は、その親密性がいかにも前面に押し出されているかに見えるものでした。

というのは、両国ともに、経済上の対立は大幅に妥協しても、ともあれその合意が優先されたもので、これまでの長年の大山鳴動がネズミ一匹の成果ほどのものでしかなく、その貿易上の利益は、双方にとっても、さほどの期待は持てない結果に収められました。

その一方、防衛上の連携の強化面はことに力点を置いて報告され、西太平洋における日豪の同盟関係の強化がことのほか重視されているかの様子が打ち出されています。

ことにオーストラリア側は、これまで自国開発してきた潜水艦建造を、共同研究開発との名で、日本製の潜水艦の使用に道を開くといった、従来路線の大転換――つまりオーストラリアの雇用をそれだけ失う――までするといったところまでの譲歩を見せています。というのは、今や軍事目的の潜水艦は原子力推進が世界の大勢ですが、日本とオーストラリアは、強い国内の反核世論(あるいは、そうした世論の背後に隠された米国の核拡散防止戦略)のため、いまだに従来型の内燃機関推進の潜水艦が前提となっています。こうした非核潜水艦という点では、すすんだ造船技術と合わせて、日本製の潜水艦の採用は確かな合理性は持っています。

こうしたい建前上の理由は付けられながらも、その内実は、真の国益が捻じ曲げられたり、少なくとも、矛盾をはらんだものであることは否定できません。

世界の警察官を自認してきたアメリカが、その国力の衰えにより、次第に世界くまない目配りから、重点を絞ったそれにへと移してきてる情勢にあって、西太平洋は、新たな覇権国、中国と直接に面と向かい合う領域です。

そうした東半球情勢にあって、日本とオーストラリアが、ともあれ米国の同盟国として足並みをそろえることは、ことに両国の政府が親米保守の路線に立つ者であるなら、おおいに現実的な選択であると言えましょう。

そういう意味では、日豪は、米国の番犬として、かってない「仲良し関係」にある様子が、しみじみとうかがえるところです。

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