百年眠るトンネル体験

越境体験=QL;コンタムライフ実践編(その21)

QL 1Year+322Day(2020年11月11日〈水〉)

今日、はじった際、暑さで距離は8キロにとどめたのだが、例の公園の芝生上でのクールダウンの際、座して目を閉じ、深呼吸をしていた。まだ日がやや高く、太陽直視は避けていたのだが、目を開けると、いきなり、“黄金色”の風景が目に飛び込んできて、思わず「ここは天国か」との感慨すら頭をかすめた。

 

QL 1Year+323Day(2020年11月12日〈木〉)

この頃、1500メートルを一気に泳ぐと後にひびき、このところ1000メートル前後にしている。この程度だと、足をツルこともない。今日も、さほど頑張ったつもりではなかったが、25分58秒と、500メートル13分のペースを切っていた。

 

QL 1Year+324Day(2020年11月13日〈金〉)

別掲載しているが、ようやく、運動による脳への効果について、医学的な実証がそろい始めてきている。その中で、BDNF(脳由来神経栄養因子)たるものがあって、これは自分で感じてきたことの、まさに物的証明である。

 

QL 1Year+325Day(2020年11月14日〈土〉)

ようやく謎が解けたというと大げさなのだが、運動の際、通りすがりに出会う人たちの中で、真っ白な毛をふさふさとはやしたシベリア犬、サモエド――なかなか人懐っこい犬――を散歩しているご夫婦がいて、会うといつも「アラスカ!」と言葉をかけてくる。最初は、その犬の名かと思っていたのだが、今日ようやくその謎が解けた。何のことない、私がアラスカ土産のTシャツを着ているためと気付いた。いつもアラスカを着ているわけではないのだが、時にはエスキモー犬をあしらったアラスカのTシャツの時もある。きっと、最初がそのエスキモー犬の時で、愛犬家ならではで、そのシャツの印象が深かったのかも知れない。

 

QL 1Year+327Day(2020年11月16日〈月〉)

シドニーの南に、ウーラゴンという港湾市がある。一時は鉄鋼など重工業で栄えたが、今では、シドニーのベッドタウン化している。同市とシドニーを結ぶ鉄道があるのだが、途中、山の迫った海岸をうねって走り、オーストラリアでは珍しく、トンネルが多い。その一部に、今では使われていないトンネルがあると知って、その歴史遺物の探索に行ってきた。

その1.5キロほどの単線トンネルは、放棄されて今年で丁度100年となる。それまで、使用されたのはわずか30年ほど。というのは、2.5パーセントという急勾配のため、登りの汽車はフルに石炭をたかなくてはならず、その煙が内部に充満して窒息してしまう問題が生じ、使用が断念されたらしい。今なら、電化で片付くところなのだが、百年前ではそれが不可能だった。

歩くこと40分ほどで、ようやく出口が見えてきた。天井は黒く煤でおおわれ、壁には最近の落書きがある。ただ、この箇所には、トンネル内側にコンクリートが箱形に打設されている。というのは、二次大戦中、日本軍の侵攻にそなえ、トンネルを爆破するこころみが行われためという。そんな因縁もある暗闇なのだ。

今日、暑くまぶしい日差しの降り注ぐなか、歴史の浸み込んだその全くの暗闇に入り込み、そこをくぐり抜ける体験をしてきた。それは、いかにも現実離れした空間で、何やら、異次元世界に迷い込んだ感があった。

土木屋の一人である私は、トンネルについては、いくつかの工事現場を訪れたこともあり、その地中の細長い管の内部に居ることの持つ独特の雰囲気を体験してきた。ただこれまでは、そのどれもが、その完成後の使用が期待された将来性あるものだった。

しかし今回は、もう使用すら終えて一世紀も経たものである。しかもそれが、歴史遺物としてことに注目もされず、知る人ぞ知る存在となって、ひっそりと眠っている。そうした過去がその暗闇の中に今も閉じ込められている。

それを文字通りに「くぐり抜ける」という実体験ができたのであるから、それは他ではできない、ここならではのものだった。

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