「ある労使共同のこころみ」の成功

   修行風景 中堅編(その7)

前回に書いた「労使共同のこころみ」が、申請手続きに手間取らされたもののそれは政府に受理されて、このこころみはなんとか達成することができました。

かくして、この先二年間、この政府補助金により、私の労働条件は少々向上し、雇い主の側もやや人件費を軽減するという、一石二鳥の成果が現実のものとなりました。

前回でも触れたように、この新制度は、オーストラリア社会が、日本ほどではないにせよ、じわじわと進行する高齢化と社会保障費の増大圧力をかかえ、連邦・州両政府にとって、その出費拡大を削減させることは避けられない必要でありました。

その一環として、すでに連邦政府は、老齢年金の支給開始年齢を現行の65歳から70歳に引上げる意向で、まず67歳からが2023年までに、70歳が2050年ごろまでに、順次、引上げられてゆきます。

また、こうした引上げや、オーストラリア経済のことに製造業の空洞化によって生じている高齢労働者の失業に取組むため、高齢者の再就業の促進は緊急の課題でもありました。

そうした状況に対して、今年7月からの新年度予算に盛り込まれた「Restart」と命名された新制度が、今回、私たちがこころみた制度でした。

これは、50歳以上ですでに何らかの社会保障を受給している者が雇用された場合、その雇用主に、フルタイム(週30時間以上)の場合、二年間に1万ドル(約105万円)、パートタイムの場合(最低週15時間)、この額の時間による比例配分額を支給するというものです。

ちなみに、私の場合、週15時間で、年に2,500ドル(26万円)、週にして48ドル(約5千円)の政府援助となります。まあ、その程度の補助ということではあります。

 

私は、経済状況から言って、早晩、何らかの高齢者就業促進の政策がだされてくるだろうとは予想していましたが、まさか、私自身のケースに、これほどぴったりのものが タイミングよく打ち出されてくるとは、予想していませんでした。

そうした渡りに船のようなこの制度だったのですが、こうした新制度の受給を成功させるまでの手続きは、政府業務につきものの、面倒な“ペーパーワーク”は避けられませんでした。レストランオーナーにこうした格好の制度の利用を提案したものの、彼らがすぐさまには動いてくれている様子が見られないのも、毎日の業務に追われて、そうした手間暇をさく余裕もないからでした。

そこで私は、提案後一週間ほどして、たぶん、自分が代わって申請もできるだろうから、それをやってみますと再提案し、ほぼ丸一日を費やして、その「ペーパーワーク」を完了させたわけでした。

オーストラリアの社会保障制度の実施は、十年ほど前までは、政府の直轄で行われていましたが、それが順次、民営化され、今では、さまざまなエージェントが、それぞれに分割された役割を実施しています。

この補助金支給手続きも、日本の「ハローワーク」に当るある「ジョブ・プレースメント・エージェント」――何社ものエージェントが競争してオフィスを開いている――を通じて行われ、私もアポイントを入れ、いわば失業者の一人としてそのオフィスの一つを訪れ、6ページにもわたる書類への記入をさせられました。こうしたエージェントは、失業者の再就職の成功の一件当たり幾らとして報酬を得ているもので、私のように、すでに雇用主をもっているケースは、彼らにとっては、もっとも割の良い顧客であったはずです。

かくして、手続き終了後は比較的スムーズに、その完了を見たわけでした。

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