女性“水平登山家”を見送る

越境体験=自覚的取り組み編=その20

QL-Day 287(2019年10月7日〈月〉)

この日、この一週間ほど我々と行動を共にしてきた日本女性を、中パ国境の山村、ソストで見送った。満席のそのマイクロバスは、その後、標高4,733mのクンジャラブ峠をこえ、緊張はらむ中国西域、新彊ウイグル自治区に入っていった。十時間以上を要する容易でない旅程である。以下、この風変わりな女性のことを記しておきたい。

登山家の登山する理由が「そこに山があるからだ」とするなら、この33歳のSさんの一人旅をする理由は「そこに知らない国があるから」とでもなろうか。言ってみれば、“水平登山家”である。そして、登山家の未踏峰への熱情に相当するものが、Sさんにとっては、何でも見てみたいとするフツウでない所へのフツウでない意欲だ。今回もパキスタンでは、危険地帯とされるアフガン国境の町を訪れている。つまり、日本をはじめフツウの国に通用しているような幸福感にはなじめない変わり種なのだ。行ってみなければ知りえない、取りこぼされている人や所への微妙だが強い感度の持ち主なのである。それは、「母のない子」としての育ちも影響していよう。だがそれより、幼い頃から、一歩々々、自力で踏破してきた目標を成し遂げる意志が、並な常識なぞには興味を抱かせないのだ。すでに80ヵ国を旅し、今後も8ヶ月ぶっ通しで、冬の中央アジア、東欧を旅する予定という。

日本もようやく、こうした規格外な女性が、国内に飼い殺しにされず、海外へ羽ばたきえる国となってきたのか。

 

QL-Day 293(2019年10月13日〈日〉)

昨日朝、シドニーに戻った。帰ってきて有り難いのは、大気汚染のなさとは言わないまでも、ほとんど感じられない、その特異さである。ラホールにせよ、バンコックにせよ、大気汚染もあれほどに至れば、正直いって、再訪を断りたくさせるものがある。

 

QL-Day 298(2019年10月18日〈金〉)

昨日より店(週末三日の寿司シェフ業)の仕事へ復帰。一ヶ月も休みをとった後の出勤で、それなりの反発も覚悟していたのだが、とても暖かく迎えられたのは予想外だった。ちょうど店が暇だったこともあるようだが、こうした円満な雰囲気は大いに助かる。これは大事にしてゆきたい。

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