今年3月末現在の統計(CoreLogic’s Hedonic Home Value Index)によると、オーストラリアの住宅価格は、全州首都平均で年率12.9パーセントの上昇を見せ、2010年以来の高い値上がり率となりました。ことにシドニーの住宅中央値価格は80,500ドル(約6800万円)で、年率18.9パーセントの値上がりとなっています(下表参照)。
3月31日時点での住宅価格変動率と価格
資料出所:03 and 04 April 2017, Australian Financial Review
【注記】表は、左から、月間、四半期、年間の変化率。Total gross returnは、記事に説明がないものの、物件の値上がり率に賃貸家賃の収益率を加えたものと判断されます。価格は売買取引価格(戸建て、アパート混合)の中央値。
こうした高騰を続ける住宅市場は、金利が史上最低に据え置かれていること(別掲記事)がその大きな一要因として指摘されています。
ことに、預金金利の低さや住宅価格の上昇の速さから、住宅購入資金を貯めようにもその上昇に追い付かず、むしろ、住むわけではない投資としての住宅購入が拡大している情勢があります。
そのため、住宅ローン貸し出し総額のうち、投資目的の貸し出し(interest-only)が拡大し、それがまた価格高騰を加速するという悪循環(投資家には好循環)が指摘されています。
しかし、供給過剰気味の住宅は、所有物件を賃貸市場に出してもその利回りはシドニーの平均で2.9パーセントと低く、いまや投資のメリットは、価格上昇のみに頼らざるをえない状況となっています。
したがって、いったん住宅価格の停滞や下降が始まれば、一斉に売りが出て市場は敗走化し、バブルがはじける事態に遭遇します。
連銀、ASIC そしてAPRAといったオーストラリアの投資・金融監視機関は、いまやオーストラリアの住宅市場の状況には、そうしたバブルのはじけ、すなわち2008年のアメリカの住宅市場崩壊の事態が迫っていると、ローンの貸主、借主の双方に警告を発しています。