いまさら何を言っているのか、ではあるのですが、よく研がれた包丁というものの味わいが、ようやく分かってきているところです。
私はこれまで、包丁の研ぎにはどこか自信めいたものがあって、それで十分であると思いこんでいる独りよがりがあったようです。
ところが最近、それまでの研ぎをもう一歩深めれるのではないかといった予感がふっとよぎって、二か月ほど前から、仕上げ砥石をつかって、いったん研ぎあげた包丁を、もう一度研ぐことを始めてみました。
最初はそうして、研いだ面が鏡状(仕上げ砥石の特徴)になることで満足していたのですが、そうするうちに、そうした見かけだけではなく、その切れ味にも微妙な鋭利さが生まれているのに気が付きました。
そしてです。そうして切れ味の増した包丁を使って出来上がった料理は、確かに、見た目がちがうだけでなく、いかにも、おいしそうなのです。
ことに、巻物のすしは最後にそれを切って出します。その際、その「すぱっ」と切れた切り口は、その存在感を増し、いかにも食べてくださいといった魅力が出ます。
むろん、味に影響する細かい工夫も、それがゆえに実行可能となります。
恥ずかしながら、いまにおよんで、この世界の深さをそう発見しているのです。