リモート時代のリアリティ把握法

訪問者データを分析して

前回、本サイトへの訪問者数が2018年の後半に、ほぼ50パーセントものジャンプを見せたことを述べ、その詳しい分析を予告しました。本稿は、その特異な増加についての分析です。

下グラフは、前回ではそれぞれ分離してグラフ化した「部門別ヒット数」の変化に重ねて「日平均訪問者数」を赤線で示し(10倍してプロット)、相互の関係をつかみやすくしました。また、矢印がそのジャンプの箇所です。

 

訪問者数とは

まず、この訪問者数ですが、本サイトでは、サービスプロバイダー(SP)の提供するVisits数をそれに使用しています。

SPによるその定義は「過去30分以内において同一のIPアドレスを含まない訪問者数で、全Hits数をベースに、〔開かれた〕HTMLページ数から計算」とされています。ただ、どんな計算式かは判りません。要するに、当サイトへのヒット総数のうち、サイトのホームページを開け(30分以内なら繰り返し開けた場合でも1回とカウント)た人数ということです。

そこでなのですが、このHits総数には、エラーのヒットや、アプリやグーグルなどのプラットフォーム運用者が用いるロボットなどによる多数のヒットも含まれており、それを除外しないと、正味のヒット数にはなりません(多い時は総数の半分ほどにもなる)。

上グラフに示されている各部門は、そうした正味のヒット数のうち、主要な6部門を採り上げたものです。

 

天皇問題をめぐって

そこで、このジャンプが発生した2018年の後半ですが、このグラフより、この期間でそれに大きく関連している部門は、「天皇の陰謀」「旧コンテンツ」「両生空間2010-2019」そして「エソテリック2部作」であることがつかめます。

ただ、この4部門の内の「天皇の陰謀」は、時期的には数か月早い同年前半にいっそう顕著な突出がみられ、このジャンプに結び付けるには時間的ずれが認められます。

そこで、当時の主要な出来事を振り返って見ますと、2016年7月に平成(明仁)天皇が高齢を理由に生前譲位の意向を示され、翌8月にはその訴えがビデオ放送されました。それをうけて12月には、退位の日を2019年4月30日にするとの政府決定がありました。つまり、2018年は、そうした退位を翌年に控えた年で、日本社会に天皇制度に関する改めての強い関心が呼び起こされていた時でした。

「天皇の陰謀」への訪問者数のこの年の数回にわたる突出は、明らかに、こうした状況が反映したものであるのは間違いないでしょう。

それにしても、この極めて特異な著書のしかもネット出版の私的翻訳版に、倍増するまでに飛躍するヒット数があったということは、この機に表面化した、天皇制度に対する公式言説に飽き足りない人々の隠れた意向がそれほどに潜在していたことの現れと推測されます。

5月を過ぎると、「天皇の陰謀」への特異な高まりは落ち着く一方、7月から8月にかけて、今度は、終戦やヒロシマ・ナガサキ被爆の73周年記念日と同期して、第二のピークが見られます。またこのピークは、「天皇の陰謀」だけでなく、「両生空間2010-2019」をトップに、「旧コンテンツ」や「エソテリック2部作」の山も、そしてその下ではやや低いながら「リタイアメントオーストラリア」や「私共和国」の小山も、合わせて発生している特徴があります。

言うまでもなく、「天皇の陰謀」以外の諸部門は、その主題はさまざまにわたっていますので、それらもこの時期に合わせて増加しているというのは、天皇制問題を引き金にして、それぞれが互いに《共振現象》を起こして閲覧されていたと考えられます。おそらく「天皇の陰謀」への訪問をきっかけとして、夏休みシーズンという好機――長期休暇の時期は腰をすえた読書が可能――も手伝って、他のページへの波及的関心を引きおこしたということです。

そしてさらに、そうした《共振現象》の余韻とみられる効果が、その後もほぼ一年にわたって起伏はありながら高原状に続き、合わせて、日平均訪問者数も「ギザギザの山頂」状態という高揚を見せています。

こうしたの分析から言えるのは、「天皇の陰謀」を窓口にしたシナジー効果が確かに発生していたと判断されることです。

言い換えれば、この異端書――日本のタブーの蓋を開けた――の完全翻訳版の出版は、私的ネット出版ながら、ここでしか得られない独自な情報の提供となり、結果として、本サイトの大きな財産となっていることを物語っています。

 

「単振」から「共振」へ

さてそこでですが、2018年11月からほぼ一年間のこうした高原状態の後、2019年の夏休みシーズン後の数か月間に見られる日平均訪問者数の目立った落ち込みがあります。

これは一見、一年前からの《共振現象》への反動が起こったかに映ります。ただその一方、「リタイアメントオーストラリア」や「私共和国」では、それ以前一年以上も引き続いてきた着実な増加が見られ、ことに2019年末の休みシーズンには、いずれの部門でも、冬休み期急増が発生しています。

つまり、そうした「反動」も部分的には見られるものの、決して全体的な動向ではなかったことが認められます。

こうして、世相がひとまず落ち着いて言わば平穏状態を呈していたところに、2020年に入って新型コロナ感染が発生し、世界に大きな脅威をもたらします。

ただ本サイト上では、こうした危機的な2020年でも、上記のようなシナジー効果による底上げが働いているのか、日平均訪問者数に現れているように、なかなか手堅い持ちこたえ状態を見せます。

しかし、2020年秋ごろより、いよいよ、日本のコロナ状況の混迷がそれほどに人々の常態を奪ったたことを示唆するのか、日平均訪問者数は大きな落ち込みを見せて、冬休み効果も部分的にとどまり、2021年2月の谷底へと向かいます。

そうなのですが、直近のデータであるこの3月には、すべての部門で――「4項合計」の微減を除き――そろった反発を見せ、なにやら新規な動きがはじまろうとしているかにも憶測させられます。今後の動向が注目されるところです。

 

失いがちな現実感へ

以上のように、外国生活をし、リタイア期にも入り、ましてコロナによる厳しい移動制約という、いずれも社会的接点を失いがちな時にあるがゆえに、私は、前回の記事で「アバター」と呼んだように、本サイトを「もう一つの人生」と位置づけています。むろんそれはバーチャルな脈略においてですが、しかし今日、そのバーチャルがバーチャルを越えるリアリティを持ち始めているのは、誰しもが感じているところでしょう。

はたして、こうした「バーチャル・リアリティ」が、どれほど真実であるのかは議論の余地の多いところです。

しかし、私は、そうした「もう一つの人生」の場である本サイトへの訪問状況を通じて、上記分析に見出せるような《現実感》を確かめています。そしてそれは、一種の《客観的調査》として、期間の上でにもデータ数の上でも、相当な妥当性をもって、現実の社会の実相を伝えるに足るものだと受け止めています。

そしてこうした実績は、アフターコロナ期に予想されている《リモート暮らし化》時代における、やもすればあやつられがちな現実感の克服の一法であるとも確信しています。

 

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