首相来店の真意をめぐって

修行風景 中堅編(その16)

私は週三日出勤なので、その機会を逃していたのですが、店の常連さんの中に、さほど遠くない所にお住まいの現首相マルコム・ターンブルご夫妻がおいでです。

そのご夫妻が、この金曜の夜、アンザックデーの週末連休を前にして、当店にお越しになりました。

これまでは、首相になってからも、お忍びでお二人だけでいらしていたそうです。それが今回は、緊迫している政治情勢も反映してか、一時間前ほどからSP(警護警察官)が先に来店して、店の隅々までを点検していました。

そしていよいよ本人が来られると、総勢6名のSPが店の内外に張りついて、おかげでこちらも緊張させられてしまいました。

二人が召し上がったのは、揚げ出し豆腐と寿司の巻物、ホウレンソウのごまよごし、それにオーシャントラウトの西京焼きでした。ドリンクは、アサヒビールに日本酒を4合ほど。

私が担当したのは、そのうちの寿司の巻物で、いつもとまったく同じものを作ったのですが、首相にお出しするのがこれでいいのかなと、やや奇妙な気分にとらわれました。

時はあたかも、オーストラリア海軍の次期潜水艦建造をめぐって、その超大型事業発注先決定選考の最終段階にあり、メディアでは、日本が3国の候補国のうちの最後尾と報じられている真っ只中です。

私は寿司を用意しながら店長と、この来店は、日本外しのお詫びのつもりか、それとも、最終挽回のチャンスありのほのめかしのサインかと、興味津々にささやきあっていました。

しかしまあそれはそれとして、店員一同、おおいに誇りに感じさせられていたひと時でした。

(2016年4月23日記)

 

 

 

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